介護保険とは、40歳以上の人が加入者となって介護や支援が必要となったと認定された高齢者をみんなで支えあう仕組みです。
運営するのは住んでいる市区町村・特別区で保険者となり、保険料を納め介護保険を利用することになる人を被保険者と言います。被保険者を加入者、利用者ともいい、サービスの事業者の提供するサービスを高齢者それぞれが必要に応じて選択し、利用できる制度です。
ここでは、介護サービスを受けるまでの流れについて詳しくご紹介します。
このページの目次
第1号被保険者と第2号被保険者
被保険者となる40歳以上の人は、第1号被保険者と第2号被保険者に別れます。第1号被保険者とは、65歳以上の人で原因を問うことなく介護や支援を必要と認定された場合介護保険サービスを利用できます。
また、第2号被保険者とは、40歳から65歳未満の医療保険の加入者で特定疾病が原因で介護や支援が必要と認定された場合介護保険制度のサービスを受けることができます。
介護保険サービスを受けるまでの流れ
高齢者やその家族が介護や支援のサービスを実際に受けたいと思ったときにはまず住んでいる市区町村の窓口に「申請する」ことが必要です。
申請すると聞いて、難しそう、面倒くさいと感じる人もいるかもしれません。ですが必要な手続きなので、高齢者の住んでいる市区町村・特別区の役所に問い合わせてみましょう。
介護保険のことがよくわからなくても、役所のどこに行けばいいのかわからなくても、困っているといった相談をしにいけば役所の担当者が申請する手続きを一緒に手伝ってくれます。
役所に行くこともできない場合はまずは電話での問い合わせでも大丈夫です。まずは声を上げることが大切です。
どこに申請すればいいの?
お住まいの市区町村によって異なってきますが、基本的には福祉の介護保険専門の窓口や、地域包括支援センターなどに申請する場合が多いです。
あらかじめ電話で問い合わせておくか、役所に行く場合は案内窓口で聞けばすぐに案内してもらえますので安心です。
申請には誰が行くの?
基本的には支援を受けたい高齢者本人、または家族です。
しかし、無理な場合などは、高齢者やその家族に代わって成年後見人、地域包括支援センター、居宅介護支援事業者、介護保険施設などが代行して申請することも可能です。
申請に必要なものは?
65歳以上の第1号被保険者が申請する場合は、介護保険被保険者証と要介護・要支援認定の申請書が必要です。また、第2号被保険者である40歳以上65歳未満の人の申請には、健康保険被保険者証、要介護・要支援認定申請書が必要です。
要介護・要支援認定申請書は市区町村の申請のための窓口で随時もらうことができますし、自治体によってはホームページ上でダウンロードできる場合もあります。
要介護・要支援認定申請書はかかりつけの主治医や病院、またその所在地や電話番号など詳しく書く必要がありますので申請窓口で書いてそのまま申請するときは事前に調べていく必要があります。
また、特にかかりつけの主治医などがない場合、その後の認定調査ではその市区町村が指定する医師による診断により意見書を作成しますので、その詳細などは事前に聞いておきましょう。
高齢者本人に代わり別居する家族などが要介護・要支援の申請をする場合、介護保険被保険者証や健康保険被保険者証、また普段から利用している医療機関の診察券などが自宅のどこにあるのか分からないケースが良くあります。
いざというときにもすぐに対応できるように、高齢者が元気なうちから家族で必要書類や重要書類の場所を確認しておく必要があります。
申請のために費用はかかるの?
要介護・要支援認定のためにかかる費用の利用者負担はなく無料ですので、安心して申請しましょう。
認定(訪問)調査・・一次判定
要介護・要支援認定の申請がされると、その市区町村の担当職員や役所より依頼された介護認定調査員(ケアマネージャー)が高齢者の自宅を訪問します。
高齢者が病院に入院していたり、老人施設に入所している場合などはその場所に訪問してくれますので、事前に相談してみましょう。
最初の訪問調査では全国共通の認定調査票で高齢者の心身の状態を74項目で聞き取り調査をしたり、動作の確認をします。
訪問調査では必ず高齢者本人と高齢者の状況を普段から良く知る人が立ち会って、調査員と高齢者とのやり取りを横で一緒に聞きましょう。
この訪問調査の主な目的は、この高齢者にはどのくらいの介護の手間がかかるのか、支援が必要なのかを客観的にプロの目で判断するものです。
その病状の重いことや、寝たきりであることだけで介護認定が重くなるわけでもありません。
注意事項
注意しておかなくはいけないのは、高齢者は自宅にケアマネージャーなどが訪問した場合、ケアマネージャーを客人のように接してしまいます。
ケアマネージャーはあくまでも高齢者の普段どおりの姿を知りたいにも関わらず、自分を良く見せようと無理をしたり、できないことなのに「できる」と見栄を張ってしまったりします。
特に、高齢者が認知症の場合は、自分では自覚がないことも多く異常を認知していなかったり、「できる」「わかる」「困っていない」と実際とは違うことを言ってしまうことが多いのです。
普段から高齢者の実情を良く知る人は、評価が不適当になってしまうと心配してつい横から口を出したくなりますが、ケアマネージャーもそういった事情もよくわかっているので、もし実際とは違ったことがあれば別室などで訂正したり、事実を伝えると良いでしょう。
主治医意見書
要介護・要支援認定が申請されると、市区町村が依頼してその高齢者の主治医が心身の状況や介護が必要となった原因になる病気などについて意見書を作成します。
この主治医への依頼は市区町村が申請書に記載された医療機関などに直接依頼して作成することなので高齢者本人や家族が主治医に対して特に手続き等することはありません。
コンピューターによる判定(第一次判定)
訪問して行った認定調査の結果を客観的に判断し要介護・要支援の判定を公平に行うためにコンピューターによる判定を行い介護状態の区分を判断します。
高齢者の介護の手間、頻度、選択の具体的な根拠などコンピューターによる判定には反映できない場合に特記事項として状況を記載することができます。
介護認定審査会による判定・・二次判定
コンピューターによる一次判定の結果と主治医の意見書、特記事項を保健、医療、福祉のスペシャリスト5人ほどで総合的に判断し介護認定審査会で審査し要介護区分を判定します。
認定結果の通知
介護認定審査会で出された要介護・要支援の判定を市区町村が正式に認定し、その申請者に結果を通知します。通常、申請した日から30日以内に認定結果を通知することになっています。
要介護・要支援の区分は要介護の1~5の5段階、要支援は1、2の2段階です。要介護1が1番軽く、5が1番重い状態、要支援は要支援1が症状が軽いことを示します。なお、要介護・要支援に該当しない人を「非該当」とします。
要介護認定の結果が納得できない場合
もし、要介護・要支援の結果に納得できない場合は、まず市区町村の窓口に相談します。相談してもなお納得できない場合は、認定結果通知から60日以内に都道府県の介護保険審査会に不服申し立てを行うことができます。
ケアプランの作成
要介護・要支援の認定が出ると、その結果を元に高齢者と高齢者の家族の希望やその状態に応じて、どんなサービスを、どれぐらいの頻度で受けるかというケアプランを作成します。
要支援1・2の人
地域包括支援センターと契約しケアプランを作成してもらいます。まず、保健師などと高齢者の心身の状況や生活の状況などをまとめ、何に問題があるのかの課題を分析します。
その後、実際にサービスを行う事業者の担当者と高齢者本人や家族などが一緒に話し合い目標を決めたり、利用すべきサービスを考え、介護予防のケアプランを作成します。
介護予防ケアプランができたらサービス事業者と契約し、実際にサービスが利用可能となります。また、一度決めたプランも一定期間ごとに効果などを見直し、ケアプランを改善していきます。
要介護1~5の人で在宅サービスを利用する人
ケアマネージャーが高齢者の健康の状態や生活の実態を良く理解し、直面する課題を分析します。
実際にサービスをする事業者の担当者と高齢者、高齢者の家族などが一緒に話し合い、サービス内容を考え、利用すべきサービスの内容や頻度を決定し、ケアプランを作成します。
ケアプランが作成されたら、サービスを担当する事業者と正式に契約しサービスの利用を開始できます。
要介護1~5の人で施設へ入所しながらサービスを受ける人
まずは入所したい介護保険施設に直接申し込み契約をします。なお、特別養護老人ホームへの申し込みは市町村が窓口となる場合があります。特別養護老人ホームに新規で入所する場合は基本的に要介護3以上の人であるとされています。
ケアマネージャーは誰に依頼してもいいの?
実際にケアプランを作成するケアマネージャー(介護支援専門員)は市区町村や地域包括支援センターなどでリストを用意している場合が多いですので、そのリストから自由に選ぶことが可能です。
基本的にケアマネージャーは居宅介護支援事業者にいますが、事業者の所在地が自宅に近いかどうか、近所に利用者がいるのかどうか、サービス内容などを確認して選びましょう。
このような状況が初めての場合などは、どのケアマネージャーを選んでいいのかわからないことがよくありますが、近所で利用している人の評判、いわゆる口コミはある程度信頼できます。
サービスを実際に利用している人などから直接事業者などの評判など、生の声を聞くことは大切です。また、インターネットなどでも事業者を検索できますし、評判などが出ていますので参考にしてみましょう。
ケアプラン作成には費用はかかるの?
ケアマネージャーにケアプランの作成を依頼した場合もそのサービス費用の自己負担はありませんので無料です。また、ケアプランを自分で作成することも可能です。
自分でケアプランを作成する場合は、利用する事業者で受けるサービス内容やその点数を確認してケアプランを作成することが可能ですが、その旨をあらかじめ市区町村に申請し、確認作業が必要です。
実際には、ケアプランを作成したことがない人がほとんどですから、ほとんどの人がケアマネージャーに作成依頼をします。
非該当になった人はサービスは受けられないの?
要介護・要支援判定において、非該当になった人も地域支援事業の介護予防・生活支援サービス事業、一般介護予防事業のサービスを受けることができます。
介護予防のための運動機能向上のための教室や自治体によっては、病院の送迎や付き添い、買い物の送迎、宅食サービスなど色々なサービスを受けることができますので、お住まいの地域包括支援センターに問い合わせてみましょう。
サービスの利用者負担
介護保険サービスの在宅サービス利用する場合の利用者負担は基本的にサービス費用の1割負担です。要介護状態の区分によって介護保険を利用できる限度額が決められています。
上限を超えるサービスを受ける場合はその上限を超えたものを全額自己負担することになります。しかし、介護予防支援や居宅介護支援については自己負担がありません。
老人施設などを利用する場合は介護保険のサービスに対する1割は自己負担で、その他、居住費、食費、生活費などは全額自己負担です。デイサービスやショートステイなども介護保険サービスに関しては利用額の1割が自己負担でその他、滞在費、食費などは全額負担になります。
なお、平成27年8月からは一定以上の所得がある高齢者は介護保険サービス利用額の2割が自己負担と増額になります。
一方、高齢者の中には、市町村民税が非課税の非常に生活が困難な人がいます。そういった人については、介護老人福祉施設、訪問介護、通所介護、短期入所生活介護などのサービスを利用する場合、利用者の負担の軽減措置される場合もあります。
高齢者がそれに該当するかどうかなど詳細についてはお住まいの市町村役場に問い合わせてみましょう。