介護保険のサービスを受けたいと思う高齢者やその家族は、まずその高齢者がどの程度介護や支援が必要な心身の状態であるのかということを公的な機関でしかるべき調査を受けて判定してもらう必要があります。その判定のことを要介護認定といいます。要介護サービスのための第一歩である要介護認定はどのように受ければいいのでしょうか?
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誰が要支援、要介護認定をするの?
寝たきりや痴呆、病疾患などで常に介護が必要になった場合に受ける介護保険サービスを受けるための要支援、要介護認定は一体誰が行うのでしょうか?
要支援、要介護状態にあるのかないのか、またあるとすればどの程度のサービスが必要であるのかということは介護保険の保険者である市区町村に設置されている介護認定審査会で判定されます。
この介護認定審査会は保健、医療、福祉の学識経験者によって構成されています。介護認定審査会で下された要支援、要介護認定はその後に受ける介護保険サービスの給付額に直接結びつくものですので、全ての地域において公平、平等である必要があります。
その為に、各市区町村にそれぞれ設置されている介護認定審査会ですがその基準は全国統一で客観的にその高齢者の心身の状態を見極めることとなっています。
要介護認定の申請方法
介護が必要になり介護保険サービスを何らかの形で受けたいと考えるならば、まずどの程度の介護が必要な状態なのかということを正式に判定してもらう必要があります。
そこでお住まいの市区町村の介護の窓口に要介護認定を受けるために申請を行います。どこに申請するのか分からないという場合は、お住まいの市区町村の役所で直接聞いてみるとすぐに分かります。
また、市区町村のホームページなどでも要介護認定について詳しいことの情報が得られる場合がほとんどですので、インターネットから情報を探してみましょう。
申請する場合、ある程度ボリュームのある要介護、要支援認定申請書を記入することになるので時間に余裕をもって申請しましょう。
ホームページから申請用紙を事前にプリントアウトして記入後、窓口に持参するという方法もあります。申請書をプリントアウトして自宅でゆっくりと申請書を記載した方がいろいろ調べやすいですが、申請自体はメールやインターネットからでは受付できませんので確認しておきましょう。
申請用紙には高齢者の氏名、住所、生年月日などに加え、かかりつけ医の名前、所在地、電話番号、保険証の番号などの記載項目もありますので、できるだけ詳細な情報を確認した上で申請に行きましょう。
高齢者本人がしっかりとそれらの受け答えが出来たり、保険証のありかなどが分かれば問題ないのですが、身近に生活をしていない家族などは分からないことも多いので、要介護認定を受けるという段階になるまでになるべく家族で色々と話し合って、確認をしておくと、いざと言う時に困りません。主治医がいないと言う人は市区町村が指定する医師の診察を受けて申請書にその医師の名前や病院名を記入します。
申請には要支援、要介護認定申請書のほか65歳以上の高齢者の場合は、介護保険被保険者証や印鑑(申請者がご本人又はご家族以外の場合)が必要です。主治医がいればその主治医が高齢者の病気などを医学的な見地から見て意見書としてまとめたものを提出する必要があります。
また、40歳以上65歳未満の人は加えて医療保険証の提出も必要ですので忘れずに持参しましょう。
もし、高齢者本人やその家族による要支援、要介護認定申請書の申請ができない場合は、地域包括支援センターや居宅介護支援事業者などが申請を代行することもできますのでお住まいの市区町村へ問い合わせてみましょう。なお、申請書の正式名称は、介護保険要介護認定、要支援認定申請書です。
認定を受けるまでの間、介護保険証は提出したままになります。その間に被保険者証が必要になった場合は被保険者証の変わりに介護保険資格証が渡されますので、もし要介護認定申請中に被保険者証が必要になった場合はその代わりに介護保険資格者証を提示しましょう。
要介護認定を受けるためには特に自己負担金は発生せず、無料で認定を受けることができます。
訪問調査とは?
市区町村の申請窓口や地域包括支援センターなどに要支援、要介護認定の申請書が提出されると、市区町村などから高齢者の心身の様子や生活の様子を調査するために調査員が自宅を訪問します。
訪問調査がある場合は、事前に市区町村から希望の日時や場所を聞くために連絡がありますので希望をしっかり伝えましょう。訪問調査では介護の対象となる人の身体機能の調査、認知機能に関する聞き取り、家族に対しては高齢者の日常の生活の様子を調査されます。
訪問調査を受ける心構え
これから受ける介護保険サービスの必要性を専門家が調査するのでしっかりと日常のありのままを伝えることが大切です。
一度、認定が下りると、不本意な認定結果であっても変更するのはある程度の手続きを踏む必要があるので、できるだけ1回で納得のいく認定を得るためにも訪問調査で聞かれることについてある程度事前に考えてメモをしておきましょう。
基本的に高齢者とその家族が同席します。質問される項目は74項目とかなりのボリュームです。何を質問されるか全く分からないで調査が終わってしまっては思いがなかなか伝わらないので、インターネットのサイト上で調査内容の詳細などの情報がありますので、家族の人を中心に是非調べてみましょう。
そして、質問内容にどのように応えるかをある程度シュミレーションしておきます。特記として記して欲しいことなどもしっかりメモなどをとって伝えられる状態にしておきましょう。高齢者本人とその家族とのコミュニケーションがどの程度しっかりできるかにも寄りますが、これまでにかかった病気やけがについて調べたり、今の生活で何に1番困っているのかを考えたりしてメモを取っておきましょう。
介護日誌などがあると分かりやすいですし、高齢者本人の前では言いにくいことも後で高齢者のいないところで、しっかりと本当のことを伝えましょう。
また、認定を正しく行ってもらうためには、高齢者の体調の良い日に調査してもらうことが大切です。もし、調査日当日に高齢者の体調が悪くなった時などは、遠慮して無理することなく別の日に調査日を変更してもらうなどの処置をしましょう。
高齢者の気持ちを大切にする
高齢者は訪問調査のために自宅を訪問する調査員をお客様として対応してしまう人は少なくありません。また、他人に対して弱音をはかないということを美徳としている人や自分の恥ずかしい面やことをなるべく隠そうとするのはわかりますが、生活実態を調査しているのに変に強がってみたり、困っていることを隠したり、できないことをできるといってしまうと調査内容が実態と違うということにもつながりかねません。
しかし、人間は誰しも何歳になっても自分をよく見せたいものです。高齢者が偽りの姿を見せてしまうというのは充分理解できることです。介護が必要になってもプライドと言うものはあって当然です。
日常の暮らしを知っている家族の人は、現状と違うことを調査員に話している姿を間のあたりにするとすぐに異論を唱えたくなる気持ちはわかりますが、その場はとりあえず高齢者自身の意見をしっかり聞いてあげましょう。
もちろんこの訪問調査の聞き取りによって、その後の要介護認定の区分が違ってきますので現実を調査員に分かってもらうことが大切です。高齢者の意見に対して訂正したいならば、高齢者がいない場所で伝えるようにしましょう。委託されてやってくる調査員もその道の専門家で、高齢者のそのような対応には慣れています。きっと説明すれば分かってくれますので気楽に相談しましょう。
一次判定とは
調査員が高齢者宅を訪問して74項目の調査を聞き取ったものをコンピューターにかけて客観的に判断するのが一次判定です。
要介護認定は一段階違うだけでも介護保険サービスに差が出てきます。金銭的な負担も絡んできますので全国一律の基準でコンピューターにおいて公平に判断します。事前にインターネットなどで自分で自己診断できるサイトもあるので、ある程度この一次判定での結果は予想できるので試してみましょう。
認定結果が出るまでにサービスを受けたい場合
訪問調査を受けてから正式に介護認定が下りるまでの間も介護に困っている場合は、地域包括支援センターのケアマネージャーに暫定ケアプランを作ってもらってサービスを受けることができます。
その際の自己負担額はサービスの1割が原則ですが、正式な介護認定が「非該当(自立)」の場合は、その間に利用した介護保険サービスの費用は全額自己負担になりますのでケアマネージャーとよく相談してみましょう。
二次判定
市区町村の担当者が高齢者宅を訪問して聞き取り調査をしたものをコンピューター判定したものと、聞き取り調査をしたときに特記事項があった場合はその特記事項、主治医などによる医学的見地からの意見書などから介護認定審査会が開かれます。
この介護認定審査会の構成メンバーは保健、医療、福祉の専門家で5人程度の人数です。介護や日常生活に支援がどの程度必要な状態なのか、どの程度の介護を必要とするのかという要介護度を決定します。
認定の結果は、基本的には申請のあった日から30日以内に要介護認定の申請書記載の住所宛に郵送されます。
要介護認定は要支援が1.2の2段階、要介護が1から5の5段階、また、要支援、要介護に入らない非該当(自立)の8段階に分かれます。
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郵送の中身は?
申請から30日以内に郵送で認定通知書と被保険者証が届きます。
認定通知書には要支援1~2、要介護1~5、非該当のどれに認定されたのかということが記載されています。この要介護認定の区分がどれになったかということで利用できるサービスや利用限度額が異なってきますので非常に重要です。
この際に決定した要介護認定のその有効期限は6ヶ月です。その後も継続してサービスを利用する場合は、有効期限満了の60日前頃にそのまま更新が必要になります。
今後介護保険サービスを受け続けると言う場合、常に有効期限はいつまでなのかということを意識しておく必要があります。
なお、新規の要介護認定の有効期間は6ヶ月ですが、一度更新申請すると12ヶ月になりますし、その心身の状態によっては3ヶ月から24ヶ月の間に期間を短縮したり、延長したりできます。
また、同封されている被保険者証を見て認定通知書の要介護区分と同じ内容が記載されているかどうか確認しましょう。
介護認定に納得できない場合は?
正式に通知された要介護認定で認定区分に納得できない場合はどうしたらよいのでしょうか?
要介護認定の区分が一段階違うだけでも様々な面でサービスや利用料に違いで出てきますので、本当に納得がいかない場合は、まず市区町村の窓口に相談してみましょう。
窓口に相談すると認定に至った理由などを説明してくれます。それでも納得いかない場合は認定の通知があった日の翌日から60日以内に都道府県に設置されている介護保険審査会に申し立てすることができます。
介護認定の有効期間内に高齢者の心身の状態が変化した場合
要介護認定の有効期限は6ヶ月ですが、もしその6ヶ月の間に高齢者自身の心身の状態が変化した場合は、その有効期間内に変更の申請ができますのでお住まいの市区町村の窓口、地域包括支援センター、ケアマネージャーなどに相談してみましょう。
ケアプランを作る
要介護認定の結果、非該当(自立)という結果が出た場合は、介護保険サービスを受けることができません。
要介護1~5と要支援1~2の人はケアマネージャーにそれぞれのケアプランを作成してもらいます。ケアプランと言うのは、高齢者やその家族の要望をもとに、どのようなサービスをどの程度利用するのかということをケアマネージャーを中心し計画を立てたものです。
要支援1~2の人は介護予防ケアプラン、要介護1~5の人はケアプランを作成します。
ケアマネージャーと高齢者、その家族ができること、できないことなどを共に確認しながらケアマネージャーがケアプランの原案を作ります。その原案を基にケアマネージャーと実際にサービスを請け負う事業者の担当者を中心に充分に理解しあいながら最終のプランが作成されます。
一度作ったケアプランも高齢者の様子が変ってきたなど現状とそぐわないことが生じてきた場合などはいつでも作り直すことができますので、状況を見て担当のケアマネージャーに相談してみましょう。