介護老人保健施設

B8

介護老人保健施設とは、「ろうけん」と呼ばれることが多いのですが、介護を必要としている高齢者を支援してできるだけ家庭への復帰をするように目指す施設です。

介護老人福祉施設はその目的のために、医師による医学的管理をし、看護師、介護スタッフによるケアに加え、作業療法士、理学療法士、言語聴覚士など専門家によるリハビリテーションをし、また栄養の管理や食事、入浴といった日常のサービスも提供する施設です。

利用者のニーズに合わせて考えられた目標に合わせたケアサービスを医師、看護師、各種リハビリ専門家などが行い、夜間でも安心できる体制です。

また、地域に開かれた施設として、介護予防を初め、介護予防教育、啓発活動など幅広い分野で活動し、在宅ケア支援の拠点のなることを目標とし、利用者とその家族が自分らしい生活を送ることができるように支援しています。

運営事業者は民間ではなく、公的な機関の運営であるため一般の老人施設に比べて費用負担が少ないことで非常に老人施設の中でも人気が高いです。

介護老人保健施設の利用対象者

介護老人保健施設の入居対象者は、基本的には要介護1以上の65歳以上の高齢者です。その他にも、比較的病状が安定していること、入院治療の必要がないのも条件です。

入居基準は施設によっても多少の違いがあるので入居希望の施設に直接問い合わせてみましょう。

また、40歳から64歳まででも特定疾病に認定されている場合には入居基準を満たします。

認知症の利用者も対象者ですし、公共的要素が強いので所得や資産が少ない人が優先的に入居できます。

介護老人保健施設でのサービス内容

介護老人保健施設で提供されるサービスは介護スタッフによる食事、排せつ、入浴などの身体的な介護があります。

それに加え、医師や看護師など医学の専門家による医学管理下でのケア、また、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などリハビリテーションの専門家により回復期のリハビリテーションを受けることができます。

一方、掃除や洗濯、買い物といった比較的に日常生活に近いサービス、また、老人施設などでよく見受けられるレクリエーションなど生活援助系のサービスはあまり充実していません。

あくまでも身体の回復に重点をおいた施設であるとの認識が必要です。

介護老人保健施設の設備

介護老人保健施設は利用者のベッドがある居室、浴室、トイレといった共同設備と食堂とリビングを兼ねる共同生活室、リハビリテーションを行う機能訓練室、医師の診察が行われる診察室などの設備で構成されています。

基本的に利用者の寝泊りする居室にはトイレやキッチンはありません。居室は、いわゆる多床室(大部屋)、従来型個室、ユニット型個室に分類されます。この居室の種類によって居住費やサービス費が違ってきます。

居室においては、現在国の方針として、プライバシーを尊重する観点で個室、ユニット型個室にスタイルが変化しています。過渡期であり、徐々にその動きが出ています。

介護老人保険施設ではまだ全体の6割ほどが多床室で、ユニット型の個室は1割程度の利用者しかいないのが現状です。

介護老人保険施設のほとんどは共同設備として居室、浴室、トイレがあります(居室には浴室、トイレはない)。他に共同生活室として食堂とリビングがあります。必要な施設としては他に機能訓練室と診察室があります。

介護老人保健施設に入居するには

介護老人保健施設の入居を希望する場合には、各施設の窓口に直接申し込みます。その際に必要な書類は施設利用申込書、健康診断書、健康保健証、身体障害者手帳などです。

もし、他の医療機関からの転院である場合は、医師の紹介状や看護記録などの提出をします。利用希望者から申し込みがあった施設は、利用希望者とその家族と面接をします。その際に必要なリハビリテーションや介護を一緒に確認します。

介護老人保健施設のスタッフや医師・行政の担当者などで構成されたメンバーで、利用者希望者の要介護度、介護の必要性、介護者の現在の状況、入居までの待機期間、資産の有無や収入額などを総合的に判断して入居の可否を決定します。

介護老人保健施設への入居は難しい

介護老人保健施設は基本的に入所期間が3ヶ月で、3ヶ月ごとにその人が家に帰ることのできる状態であるのかという判定が行われ、在宅可能であると判断されると退去する必要がありますので1年弱で退所する人もいます。

入所資格基準さえ満たしていれば平均3ヶ月から半年ほどで入所可能な場合も多いです。しかし、人口の集中する都市部では介護老人保健施設の不足が深刻で空き状況がなかなかない地域もあります。

入所希望の人は、希望施設を一箇所に決めるのではなく、範囲を広げて数多くの介護老人保健施設に同時に申請書を出しておく方が良いでしょう。

介護老人保健施設の利用料

介護老人保健施設は入居する際の初期費用は必要ありませんが、月額の利用料が必要です。入居した場合は、その利用者の居室の種類や設備、世帯収入や課税の状況によって利用料に違いがあります。

おおよそですが、月の利用額は8万円~15万円ほどと特別養護老人ホームよりは若干高めになっていますが、有料の老人ホームなどに比べると断然価格が抑えられています。

介護老人保健施設のメリット

介護老人保健施設は、医療法人が運営するものは約7割、社会福祉法人が運営するものは約2割弱です。公的な要素の強い施設で医療的なケアや専門的なリハビリテーションに力を入れています。これらを必要とする重度の要介護状態の高齢者が多いのが特徴です。

滞在型なので食事、排せつ、入浴などの日常生活に欠かせない介護サービスは提供されますが、介護老人保健施設のサービスはあくまでも利用者の在宅復帰が目的なので提供されるサービスの主たるものは自宅復帰のためのケアです。

メリットといえば、特別養護老人施設よりも医師などによる医学的な管理ケア、専門家による機能訓練が充実しているにも関わらず、利用料が安いこと、入居のための一時金の必要がないことです。

介護老人保健施設はリハビリ施設であるイメージが強いものですが、医療面は他の施設に比べて数段充実しています。入所定員100人当たりの基準ですが、医師が一人常駐、看護師、准看護師が9人です。

特別養護老人ホームは医師が常駐する必要はありませんし、看護師、准看護師が3人なのが基準ですから充実ぶりが分かるでしょう。そのため、施設の運営は医療法人であることが多く、医療・リハビリ・介護の面で24時間体制で安心できます。

これらのサービス内容で月の費用8万円〜15万円の利用料ですし、収入に応じて利用料の軽減措置もあります。

介護老人保健施設のデメリット

デメリットは特別養護老人ホームのように終身制ではなく、入居から3ヶ月ごとにこのまま施設にいるべきか家に帰ることのできる状態なのかという入居継続の判定が行われ、そこで在宅介護が可能だと判定が下されると退所する必要がでてきます。

長期入所が確約されていない点では不安が残ります。

また、医学的な専門要素が強いので娯楽としてのレクリエーションなどが少ないこと、プライバシーのない多床室が多くを占める状態が現在でも続いています。

介護老人保健施設の現実

要介護度の重い高齢者を家で介護するのは非常に難しいことです。家族としてはできるだけ長く入所して欲しい希望があります。

特別養老人施設は入所希望者が殺到して何年も入所希望をしている高齢者とその家族が多い現状もあり、介護老人保健施設は基本的に3ヶ月で退所を求められるケースがあるので敬遠されがちです。

ですが、実際のところ3ヶ月はおろか何年も長期期間にわたって入所している人も多い現実があります。

介護老人保健施設の賢い使い方

最短だと3ヶ月で退所する必要がある介護老人保健施設ですが、特徴を活かした賢い使い方がいくつかありますのでご紹介します。

夏や冬だけ利用する

3ヶ月の期間の時期を工夫して在宅介護と交互に利用している人もいます。特に真夏の暑い時期や冬の寒さが厳しい時期などは在宅で介護することは非常に大変です。

自宅では家中の温度を快適に保つことはなかなか難しいので夏と冬の間だけ介護老人保健施設を利用すると、利用者も家族も負担が軽くなる利点があります。気候の厳しい時期は老人にとってみると非常に快適な面があります。

人気の高い介護老人保健施設なので、希望する時期だけ利用することがしにくいかもしれませんが、総合的なニーズに応える地域拠点でもあります。

普段からショートステイ、通所リハビリ、訪問介護、訪問リハビリなどで利用して顔見知りになっておくことも大切です。いざというときに頼れる存在になります。

特別養護老人ホームの順番待ちをする

介護老人保健施設は特別養護老人ホームに比べると利用率が若干低いので多少の余裕がある場合が多いです。

特別養護老人ホームになかなか入所できずに困っているならば、とりあえず介護老人保健施設に入所して特別養護老人ホームの順番が回ってくるのを待つ方法があります。

介護保険に基づく日常生活の介護も充実していますので、空きの少ない施設ですが一つ一つ丁寧に調べて入居可能な介護老人保健施設を見つけましょう。

認知症の改善

介護老人保健施設では軽度から重度までの認知症の人の認知症短期集中リハビリテーションも行われています。

在宅ではどんどんひどくなる認知症の進行をどうしようと悩むことも多い認知症ですが、介護老人保健施設で3ヶ月間ほど入所してリハビリすると行動や心理面で症状の改善に有効であるとの調査結果もあります。

介護老人保健施設を選ぶ際のポイント

介護老人保健施設を選ぶ際に留意すべきポイントがいくつかありますので説明します。

リハビリテーションの質

介護老人保健施設の最大の特徴は、短期間に集中的なリハビリテーションを提供してくれる施設であることです。

リハビリテーションも理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など各分野の専門家が主体となって行うものですので、リハビリテーションの質を重点的にチェックする必要があります。

リハビリテーションでも各施設のよって行われているものは違いますし、1日に何時間のリハビリテーションのサービスがあるのか、どのようなプランで最終的にはどのような機能回復を目指すのかをまず確認してみましょう。

利用者がこうなりたいという理想に沿ったリハビリテーションを目指す施設が良い施設です。単独で歩けるようになりたい、料理や掃除、洗濯などを自分で行いたいなどの実際の生活の場面で行かせるシーンを想定しているかチェックしましょう。

他の利用者が実際にリハビリテーションを行っている部屋を見学したり、リハビリテーションを行う人の態度、受けている人の様子、リハビリ室の雰囲気が良いのか悪いのか、活気があるのかないのかを自分の目で確かめましょう。

施設の設備、立地条件

介護老人保健施設の部屋は、多くの人が一部屋を利用する多床室と個室のタイプがあります。

プライバシーを重視したいならば個室タイプに空きがある施設を選んだほうがいいので焦らずゆっくり決めましょう。

娯楽室や食堂などは明るい雰囲気で広々とした空間が確保できているかが大切です。リハビリテーション室の設備の充実も重要です。中にはプールを備え付けた施設もあります。

設備が充実しているとリハビリテーションも楽しみながらできる場合もあります。浴室やトイレなどは清潔感があり、衛生管理ができているかどうかを見ましょう。衛生管理ができていない施設は色々な病気が蔓延しやすい状況にあります。

また、介護老人保健施設の立地環境はどうでしょう?特別養護老人ホームのように永久的に住み続けるところではないので環境をそれほど重視する必要はないですが、交通の便がいいところ立地条件が良いところの方が家族には好都合です。

レクリエーション

レクリエーションは単なる利用者の娯楽だけが目的ではありません。社会性を養ったり、リハビリテーションの一環でもあります。

レクリエーションや季節のイベントがマンネリ化せずに常に新しい取り組みをしているのかどうかもチェックしましょう。

介護施設を探すなら、まず電話相談を


老人ホームやグループホーム、ケアハウスなど介護施設選びにお悩みの方は、シニアあんしん相談室がおすすめです。

予算・立地・医療体制などで希望にぴったりの介護施設を探すことができます。

資料請求やお電話での相談も全て無料です。

※電話相談は、平日9時から20時、土日祝は9時から18時まで

>>シニアあんしん相談室

  • このエントリーをはてなブックマークに追加