介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)とは、常に介護が必要な状態の利用者ができるだけ自宅に帰ることができるように入浴や食事、その他日常生活の支援や機能訓練、療養等の世話をする施設です。
介護が常に必要な方が利用するために利用料を抑え、長期の滞在になっても負担にならないように配慮された施設です。
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介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)に入るには
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)に入りたい場合は、担当のケアマネージャーにその旨を相談しましょう。そしてケアマネージャーに希望する施設に申込書を書いてもらい、各施設や役所の窓口に提出します。
その際、複数の介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)に同時に申し込むことが可能です。
施設への申請書が提出されると施設のスタッフ、医師、行政の担当者などが要介護度、介護の必要性、介護者の状況、資産や収入、待機期間などを総合的に判断して入居の可否を判断します。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)に入るのは難しい
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は現在、入所希望者が非常に多く待機している高齢者が多いのが現状です。
利用者の平均の滞在期間が4年と長いので人口の多い都心部などは満室のため入居するには激戦であるといえます。厚生労働省などは資金不足のために介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の新設には積極的ではなく、40万人ほどが待機しているといわれています。
待機期間も数ヶ月から長い場合は10年ほどになります。同じような状況の高齢者が多くいるために、即日入居するケースはないと考えておきましょう。
待機人数や期間など大まかな目安を知りたい場合は各施設に確認しましょう。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の利用対象者
介護老人福祉施設を利用できるのは、要介護認定を受けて、その結果が要介護1~5になった人で65歳以上の高齢者なのが基本的な条件です。また長期入院を必要としないこと、伝染病などの疾患がないことなども条件に挙げられます。
60歳から65歳の対象外の人でも初期痴呆状態であることや、配偶者が入居するなどの場合、入居が認められます。収入や資産についての審査もあり、少ない人ほど優先して入居できます。
しかし、要介護1.2の人はやむをえない事情がない限り利用することはできません。要支援1.2の人は利用できない施設ですので注意しましょう。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)でのサービス内容
主なサービスは、介護スタッフや看護師などによる入浴、食事、排せつの介護、各機能訓練の専門家や生活相談員などによるリハビリテーションやカウンセリング、介護スタッフによる掃除、洗濯、買い物やレクリエーションといった生活の援助サービスです。
一方、胃ろうや気管切開などの医学的な対応や、重度の認知症への対応はあまり提供されていません。実際のところ、寝たきり状態の高齢者の生活を支えるための施設となっています。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の設備
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は、利用者の居室と共同設備(トイレ、浴室)、共同生活室(食堂と共同のリビング)で構成されているので、利用者の居室にはトイレやキッチンは備え付けられていません。
居室は、個室、多床室、ユニットがない従来型個室、10人程度のユニットごとにリビングなどの共同生活室があるユニット型個室に分類されます。この居室がいずれに属するかによって居住費やサービス費は異なってきます。
現在ではいわゆる多床室や従来型から、一人で過ごす個室と周りと交流を持てる共同生活室を備えたユニット型に設備が変っていっていますが、まだ従来どおりの多床室も存在しています。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)のスタッフは、医師(配置義務がないので嘱託の場合が多い)・生活相談員・介護スタッフ・看護師・栄養士・機能訓練指導員・ケアマネージャーなどです。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の利用料
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)への入居には初期費用の必要がないのが大きな魅力です。初期費用はなく月ごとに利用料が必要になります。
利用者の入居している部屋の種類や世帯収入、課税状況などにより差がありますが、入居している人は月5万円から13万円ほどで利用することができるので、有料老人ホームよりもかなり費用が抑えられた施設になります。
月費用の内訳は介護サービス費、居住費、食費、その他の日常生活費となりますが、要介護度によって介護サービス費は異なり、要介護度が重くなるほど、介護サービス費は高額に設定されています。
施設のサービス内容によって異なりますが、外泊費用や看取り介護費用などは加算され、いずれも自己負担額が1割です。介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の費用は利用者本人か配偶者や子供である扶養義務者が負担することになります。
要介護5の人が従来型の多床室を利用する場合は月の費用は約93,000円ほど、同じく要介護5の人が、ユニット型の個室を居室とする場合は、1ヵ月の利用料は全部で約140,000円になります。居室の種類によって値段が大きく変わるので利用の目安にしましょう。
利用者や扶養する世帯全員が生活保護対象者である場合や収入が少ない場合は、居住費や食費が低くなったり、介護サービス費も自治体から補助金が支給されますので、思い当たることがあればケアマネージャーに相談しましょう。
良い介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)を探すポイント
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)を探すには、担当のケアマネージャーに相談したり、役所の福祉課に相談する他、インターネットなどで全国の介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)を簡単に検索して探すことができます。
しかし、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は全国的に非常に不足していますので、空きを探すだけでも難しい状況の中、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)を実際に選べる人はあまりいないのが現状です。
それでも、家族を入居させるに当たって安心できる施設を探したいものです。いくつかのチェック項目を挙げてみました。
施設と設備
老人施設はどんどん建設が進んでいますので、比較的新しい建物が多いのですが、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は財政不足から厚生省が建設を渋っている場所も多いので、ある程度年数のたった施設も多いです。
新しい建物ならそれなりに設備も充実していますし気持ちの良いところが多いですが、施設が運営されてから日が浅いことから経験のあるベテラン職員は少ないと考えられます。
新しい建物でもサービスの内容が悪いと良い施設だとはいえません。逆にある程度年月を経た事業所などは施設は古いですが、ベテラン介護スタッフが多いともいえます。
古い建物でも綺麗に掃除が行き届いていて清潔感があり、物が整理整頓されている施設は信頼できます。
床に何かがこぼれたまま放置していたり、汚物の処理が完全でないので悪臭がする施設であったり、ドアノブやエレベーターのボタンなど複数の人が接触するであろう場所が汚れていないかチェックします。
不衛生な施設に高齢者が集団で生活すると、伝染病がはやるなどリスクがあります。生理整頓が不十分な施設では、また事故が起こりやすくなります。
スタッフの様子
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の善し悪しはスタッフの様子にかかっているといっても過言ではありません。良い人材が豊富にいることが一番大切です。
見学に行った時に、玄関の事務員さんがすばやく丁寧に対応してくれたり、電話をかけても快く対応してくれる施設は良い施設です。
実際の介護スタッフが笑顔で家庭的な対応をしているか、丁寧に介護の仕事をしているかは食事時間などを少し観察するとよく分かります。
また、職員の数が充実しているか、職員の定着率は高いかなどは重要です。できるだけ情報を集めて調べてみましょう。
サービスの質は良いか
サービスの質をチェックするには食事、排せつ、入浴の3大介護を確認するとよいでしょう。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は要介護度の高い利用者が多いのですが、食事は1日のうちの楽しみの一つでもあります。その食事の介助が単なる作業として行われている施設は残念ながら存在します。
高齢者と目を合わせて会話しながら、ペースを考えながら介助してくれているか、また、できるだけ経口摂取を維持しようと努力してくれているか、食事前後の口腔ケアをしてくれているかのチェックも大切です。
排せつは、介護する側にとってみればおむつよりもトイレに連れて行くほうが大変なことです。ですから、日中でも完全なおむつで対応する施設も多いのですが、良い施設はできるだけ自分でトイレに行けるようにトイレに誘導し、日中おむつは使わないようにしています。
また、排せつ物のついたおむつをできるだけ早く屋外に出して処理しているかも重要です。早く処理されていれば館内は臭くないでしょう。
おむつの交換中にカーテンを閉めていなかったり、トイレのドアが開いている状態でないことは利用者の尊厳を守ることから重要です。
入浴では、一人ずつ入る浴槽のお湯を一人ずつちゃんと交換しているか、浴槽を洗っているかなどは衛生面からも重要です。
介護保険相談員や外部からの訪問者を積極的に受け入れている開かれた施設は良い施設です。ボランティアを受け入れたり、慰問や面会、外部の見学者が多いのも良い施設です。
逆に外部の人を受け入れない施設は、他者からの指摘も受け入れない閉ざれた組織なのでよくないこともなかなか改善されず放置されやすくなります。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の問題点
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は全国的にも需要に対して供給がまったく追いついていません。また、介護保険導入後に単価がさらに下がり、軽費削減が各施設で行われるために人手不足が深刻化しています。
福祉施設の人材不足から痴呆などにより徘徊する利用者をベッドや椅子に縛り付ける身体拘束が問題となりましたが、介護保険導入後に原則禁止となりました。
しかし、厚生労働省の調べでは、今なお入所者の役2割ほどの人が身体拘束などの人権を無視した行為を受けている実態があるとのデータもあります。
施設側としてもできるだけ身体拘束などをしないように考えていますが、介護ヘルパーの不足、設備の不備、事故の際の保険の不備などで万が一利用者に怪我を負わせて世間から非難を浴びるよりも、痴呆老人の身体を拘束してしまう現状があります。
入浴の際の問題もあります。入浴も人手不足や怪我防止の目的で介護スタッフ一人が何人もの利用者を機械的に入浴させるので、倒れないためにも椅子やベッドに縛り付けられたままヘルパーさんが体を洗うことがされていることもあります。
縛り付けられたまま体を洗われたり、椅子から浴槽にずり落ちて危うくおぼれる事故が後を絶ちません。
寝たきりで痴呆がすすんだ高齢者を家族が介護していくのは肉体的にも精神的にも限界があります。実質的にはそういった高齢者や家族の受け皿のなっているのが介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)です。
しかし、国は介護保険の財政がひっ迫している理由から介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)などの予算を思ったほど増やさないのが現状で人手不足が慢性化しています。
人手不足、財政逼迫ではサービス低下は避けられません。国は介護施設、介護するスタッフの待遇を1日も早く改善することが望まれます。