介護療養型病床群とは、長期の介護や医療が必要な高齢者のための医療型の介護保険施設です。医療施設ですので、他の老人介護施設よりも医療面のサービスが充実しています。
介護療養型病床群は介護保険が適用される介護療養病床(介護型)と医療保険が適応される医療療養病床(医療型)があります。一般の病院と異なり療養型の場合は、病気の治療が目的ではありません。
病状が悪いときは従来の病院での治療をしますが、回復期になっても自宅での療養が難しく、病院に入院するのも難しい方の利用を目的とします。まさに療養が目的の施設なのです。
以前は、特別養護老人施設や介護老人保健施設よりも寝たきりの人のような要介護度が高く、長期にわたる介護や医療が充実したケアが必要な利用者を想定して作られました。
国の方針としては医療面を充実させた介護老人保健施設などともにそのあり方を模索しながら具体的な検討を進めることとなっています。
介護型の療養病床は廃止していく方向にあります。
介護老人保健施設よりもより医療面を充実させた新型老健といわれる新しい形の介護施設への転換していく流れです。
現在約38万床ある療養型病床のうち、23万床は介護老人保健施設、ケアハウスなどの居住系サービスへ、15万床が医療系の療養病床へ転換される予定です。
このページの目次
介護療養型病床群の特徴
介護療養型病床群は医師や看護師などの医療専門スタッフや、介護福祉士、管理栄養士などの専門スタッフが常に施設にいることで、介護施設の中で手厚い専門的な医療サービスを受けることができる特徴があります。
特別養護老人施設や介護老人保健施設と似ていますが、主に医療法人が運営する医療施設である場合が多く、特別養護老人施設や介護老人保健施設よりも状態の重い人を受け入れています。
介護療養型病床群はあくまでも医療機関ですので、介護療養型病床群では食事や排せつの介護サービスは受けられますが、本来は急性疾患から回復期にある重度の要介護利用者の医学的ケアが中心です。
特別養護老人施設のように生涯入所できず、病状の回復度によっては退所を求められる可能性もあります。
また療養病床は廃止の方向で新型老健という新しい形の老人介護施設に転換されます。医療費の減額も目標で、診療報酬は従来の出来高払いとは違い、包括性になっています。
介護療養型病床群のメリット
医師や看護師、介護士、管理栄養士などの専門スタッフによる高度な医療ケアを受けることができますし、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったリハビリテーションの専門家による機能訓練が充実しています。
利用料が比較的安く入居する際の一時金が不要です。
介護療養型病床群のデメリット
入居希望者が多いので容易に入居できません。また、多床室である場合が多くプライバシーが充分に保護されてはいません。
施設の性質上、医療施設であるために娯楽目的のレクリエーションが少ないです。
制度が廃止される方針にあるので、すでに介護療養型病床群に入所している利用者は制度の廃止(2020年)に伴い、代わりの施設を探す必要があります。
介護療養型病床群の入所基準及び対象者
介護療養型病床群の入所対象者は医療的な管理が必要ない要介護1以上の65歳以上の高齢者なのが基本条件です。60歳以上65歳未満の人でも初期の痴呆状態にある人は入所可能です。
その他の入所基準としては、長期の入院を必要としない人、伝染病などの疾患がない人なのが主なことですが、地域やその施設によって基準が違うため詳細は各介護療養型病床群に問い合わせましょう。
また、利用者とその家族の収入や資産が少ないと比較的優先的に入所しやすいです。
介護療養型病床群のサービス内容
介護療養型病床群は医療面が充実した介護老人施設です。
医師による医学的な療養上の管理や看護師やスタッフによる看護、食事や入浴、排せつなどの日常的生活の介護、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などによる専門的リハビリテーション、ターミナルケアなどのサービスを受けることができます。
特別養護老人施設などに比べると医療面が非常に充実していますが、回復期の重度要介護者が多く入所する施設ですので入所人数に比べて医師や看護師の数は少なめですが、介護スタッフなどは多めに配置する必要があります。
介護療養型病床群の費用
介護療養型病床群では、入所の際の一時金など初期費用が必要ありません。
費用は月額で負担しますが、介護サービス費と居住費、食費、日常生活費などの生活費が自己負担となります。介護サービス費は要介護度によって異なりますが、要介護が重症化するほど介護サービス費は高額に設定されます。
施設の設備や職員の人数、勤務体制、施設のサービスなどによっては介護サービス加算も発生しますが、基本的に自己負担割合は1割負担です。(収入などによっては自己負担割合が2割になる場合もあります。)
居住費は利用者の居住スペースが個室か多床室かといったタイプによってことなりますが、多床室の方が個室よりも低料金になります。その他、散髪代、電話代、新聞、雑誌、嗜好品代などは全額自己負担になります。具体的にはケアマネージャーや各施設に問い合わせて下さい。
介護療養型病床群は医療行為に対する特定診察費などの加算費用が発生するので介護老人保健施設より一般的な利用料は高額になります。
入院の基本料は一般の病床と比べるとかなりの制限があり診療報酬が大きく違います。介護療養型病床群は医療型と療養型でも違いますが包括医療が徹底されているので、色々な治療や検査を多く行っても包括点数での計算になります。
外泊点数や他の専門医に紹介したり、専門的な検査や治療を行うにもさまざまな制限があります。
詳しく制度を知らないと紹介された医療機関などとの間でトラブルになるケースもあります。入院日数が180日を越える利用者については入院基本料が15パーセント減額され療養病床に適応されます。
療養病棟に入院した場合の点数計算が複雑で現場では算定不可能な場合が多いです。
介護療養型病床群の費用は利用者の費用負担能力によって、利用者本人や、配偶者、子どもなどの扶養義務者が負担することになります。
本人や、扶養義務者が生活保護の対象者であったり、年収が少ない場合などは居住費や食費は低く設定され、介護サービスについても補助金などが自治体から支給されるので実際の自己負担金額についてはケアマネージャーや各施設に問い合わせましょう。
一ヶ月の利用料の具体的なものとして例を挙げると、要介護3で、多床室に30日入所した場合、自己負担額は9万円ほどです。居住スペースが個室になると5万円ほど負担が大きくなります。全体としてはひと月の利用料は約9万円ほどから17万円ほどが目安です。
介護療養型病床群の施設
介護療養型病床群の入所者の居室はまだまだ多床室が多く、全体の50パーセントほどは4人室などです。利用者のサービス内容によって重度の要介護利用者のための介護療養病床と痴呆老人を対象とした老人性認知症疾患療養病床とに分かれます。
医療機関としての機能を重視した介護療養型病床は利用者100人につき、医師が3人の施設が多いです。
多くの施設が病院に併設されており、居室、浴室、トイレといった共同設備、機能訓練質、診察室、食堂、レクリエーション室といった共同生活室があります。
介護療養型病床群に入所する方法
介護療養型病床群への入居を希望する場合は、直接入居を希望する施設に申し込みを行います。入所希望であることを担当のケアマネージャーに伝えると、入所希望施設に申し込み書を用意してくれます。
入所希望者の多い介護療養型病床群ですので、一箇所に希望施設を限定することなく、同時に複数の施設に入所希望を申請しましょう。入所申込書が申請されると、施設の医師、スタッフ、役所の担当者などの委員会で総合的に判断して入所の可否が決定されます。
介護療養型病床群の入所は難しい?
年々、重度の要介護者が増えている状況において介護療養型病床群の入所は難しくなっています。2012年からは介護療養型病床群の新規施設の建設は認められていないので定員の9割以上が埋まっており、入所を希望しても数ヶ月の順番待ちは不可欠であるとされています。
早く入居したい場合は、待機人数や待機期間などを確認して複数の施設に同時に入所を申し込んでおく必要があります。
また、2020年には介護療養型医療施設を廃止する予定ですので、現在入居している利用者もそれまでに他の老人介護施設などを探して入居し直す必要があります。
介護療養型病床群を選ぶコツ
入居者に比べて医学スタッフが比較的少ないです。国の施設基準が新しくなり部屋を広く取ったり、廊下などにゆとりを持たせる施設基準に移行しつつありますが、従来の狭いままの施設で運営しているところも多くあります。
できるだけ面積的にもゆとりのある施設を選択することで衛生面、安全面でも安心できます。療養重視の老人施設ですので、衛生的なことや整理整頓がいつもできている施設であることは重要です。
施設の衛生面などを確認するためには実際に施設に出向いて確認する必要があります。
また、スタッフの対応や仕事などは他の施設同様に一番重要です。外部からの訪問者に対する対応、内部の利用者に対する対応、スタッフ同士の雰囲気などはしばらく見学すれば分かります。
排せつ介助はカーテンなどをしめてプライバシーを守った介護であるかどうかは、できるだけ確認した方がよいでしょう。
認知症高齢者の介護には徘徊などをするので介護スタッフの人員不足がどの施設でも深刻ですが、認知症高齢者などを日中、夜間に見守るスタッフの数なども施設に聞くなどしてたしかめましょう。
スタッフのチームワークがよいとサービスも良いものが期待できますが、人間関係がうまくいっていなかったり、スタッフの待遇が悪い施設などはスタッフの定着率が低く、どんどん新任のスタッフが採用されます。
ベテランスタッフが少ないと利用者の細かい情報などを共有できていない場合も多く、手厚い介護が期待できません。
新聞や折込チラシなどの求人情報などで常に介護スタッフなどを募集している施設などは人員不足が懸念されます。人員不足になると利用者に対するスタッフのサービスも必然的に悪くなりますのでチェックしておきましょう。
医療費を包括的に計算する場合が多い介護療養型病床群ですが、加算される医療費の計算が複雑ですのでしっかり明確管理している施設がよいでしょう。