介護保険制度とは平成12年4月にスタートした制度で、介護が必要な高齢者とその家族を社会全体で支援するための制度です。高齢になること、介護が必要になることは他人事ではありません。
誰もが将来経験することで、誰もがほかの人の支援なくしては生きていくことができません。万が一、自分が介護を必要になったときには回りにサポートしてもらって、色々なサービスを受けることができるようにしたのが介護保険制度です。
介護保険制度では40歳以上の人が保険料を支払い、国と都道府県が税金を投入しサポートしています。サービスの運営は市町村が主に行い、一人一人にあったサポートを出来る限り提供できるようにしています。
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介護保険制度は必要か
介護保険制度ができる前の高齢者へのサービスは健康保険の老人保険で賄われていました。その後、昭和48年に老人福祉法が改正されて基本的には70歳以上の高齢者の医療費自己負担は無料で行われていました。
しかし、自己負担がないことで無意味な診療が増えたり、独り暮らしの高齢者の長期入院などが問題になりました。また、社会的にも高齢化が進み高齢者の医療費は増加の一途をたどりました。
そこで政府は高齢者の医療費の自己負担を課したり、老人ホームや福祉センターの設立をすすめました。このような流れでできたのが介護保険制度です。
全国一律のサービスを各施設でなかなか受けることができなかったり、介護業界の人材不足、高齢者の低所得者の保険料負担など様々な問題を抱えていますが、その都度、状況を見極めながら改正を繰り替えし、その時代にあったサービスを提供できることを国は目指しています。
これからもますます超高齢化社会になる日本において、国民全体が関心をもって取り組む必要のある社会問題を含んだ制度であるといえるでしょう。
保険者と被保険者
介護保険制度において、保険者とは運営している側で、被保険者は実際に介護サポートサービスを受けることのできる人をいいます。被保険者とは、主に65歳以上の高齢者です。
介護保険サービスを利用できる条件としては、日常生活を一人で送ることが困難とされた要介護認定と要支援認定を受けている第1号被保険者と、40歳以上65歳未満の医療保険に加入している第2号被保険者に分かれます。
第1号被保険者の介護保険料
65歳以上の被保険者の保険料は国の基準に従って、運営する保険者である市町村が3年に一度定めます。保険料の負担は所得段階別保険料と呼ばれる仕組みになっており、所得の低い人から所得の多い人まで6段階に分けて納めるようにになっています。
この保険料は設定された「基準額」によって設定されていますが、これは各市町村によって異なりますのでお住まいの市町村の窓口で確認しましょう。1番負担の少ない第1に属している人で生活保護受給者などは基準額の50パーセント負担になっています。
1番負担が大きい第6に属している人は、被保険者本人の合計所得が200万円を越える場合で市町村民税を本人課税で支払っている人です。この人で基準額の1.5倍の保険料を支払っていることになります。
なお、この第1号被保険者の平均保険料は介護保険制度が開始された頃に比べると1.5倍ほどに上がっています。年々、高齢者への介護保険料の負担額が増えていっており、今後も負担増が見込まれます。
第2号被保険者の介護保険料
加入している医療保険の算定によって保険料が異なってきます。40歳から64歳の第2号被保険者は、従来課せられている医療保険料に介護保険分が加算されて徴収されます。
介護保険料は40歳から納めますが、実際の介護サービスを利用できる年齢は65歳からとなります。しかし、65歳に満たないひとが特定疾患を患った場合は、介護保険サービスを受けることが可能になります。
介護保険料の納付
第1号被保険者の場合は、納付方法は年金額によって異なります。年金は18万円ある人は基本的には年金から天引きされて徴収されます。
年金とは老齢基礎年金、老齢厚生年金、退職年金、遺族年金、障害年金を指します。年金が18万円未満の人は個別に市町村に納付書で納付します。(特別徴収)
第2号被保険者の場合(40歳から64歳の人)は、加入している医療保険の保険料とあわせて医療保険者に納付する形式をとります。(普通徴収)
健康保険の場合
医療保険ごとに決められている介護保険料率と給与などで決定し、事業主と被保険者で半分ずつ負担します。また、40歳から65歳までの被扶養者は介護保険料負担がありません。
しかし、被保険者、被扶養者が共に65歳を越えている場合は、原則として第1号被保険者として年金から介護保険料分を天引きして納付します。
夫婦の年齢の組み合わせによって負担額が変ってくるので注意しましょう。
国民健康保険の場合
市町村ごとに所得割、資産割、被保険者均等割、世帯別平均割の中で組み合わせを決めて、世帯ごとで世帯主が年間の保険料を国民年金保健に納めます。
また特定疾患の場合、被保険者が支払う金額の上限が決められています。特定疾患は厚生労働大臣の定める疾病で、病院等でこの疾病に関する診療を受けた場合には、病院等へ支払う金額は一つの病院ごとに、ひと月に1万円が限度額となります。
ただし、人工腎臓(人工透析)を実施している慢性腎不全で70歳未満の上位所得者については、限度額が2万円となります。
また、入院した場合には、食事代や差額ベッド代等の保険適用外の費用が別途求められます。
特定疾患とは
- 脳血管疾患(脳出血、脳梗塞)
- 初老の認知症(アルツハイマー病、ヤコブ病、脳血管性痴呆症) パーキンソン病
- 筋萎縮性側索硬化症
- 脊髄小脳変性症
- 糖尿病による合併症(腎炎、網膜症、神経障害)
- 閉塞性動脈硬化症
- 多系統萎縮性シャイドレーガー症候群
- 慢性関節リュウマチ
- 変形性関節症
- 後縦靭帯骨化症
- 脊柱管狭窄症
- ウェルナー症候群
- ガン末期
などです。
介護保険サービスと障害福祉サービスの違い
介護保険サービスとは、高齢になることによってかかる病気やそのために不自由で介護が必要な時にサービスを受けられるものです。一方、高齢になったことが原因でなくても介護サービスが必要な場合があります。
例えば、生まれつきの疾患があったり、事故で怪我をしたその後の介護です。このような場合の介護は同じ介護でありながら介護保険とはまた別の「障害福祉サービス」に該当します。
サービスである介護の中身は、高齢化による介護と高齢でないにも関わらず、かかった疾患による不自由を補うための介護では全く同じ内容のサービスであっても区分されます。
サービスを受ける側が65歳以上で介護保険サービスの適用を受けられるのであれば、この介護保険サービスを優先して利用しなければなりません。また、40歳~64歳までの特定疾病がある人も介護保険における介護サービス制度を優先しなければいけません。
しかし、介護保険においてその負担がカバーできない場合などは、障害福祉サービスを利用することになっています。
適応除外施設とは
40歳以上の人の中にはその条件によっては介護保険の被保険者に該当することになります。
例外として、介護保険法に定められていない身体障害者療護施設や重症心身障害施設、救護施設、指定障害者支援施設といった適応除外施設に入所している場合は、介護保険被保険者として扱われずに介護保険でのサービスを受けることはできません。
住所地特例施設とは
基本的に介護保険のサービスを受ける場合は、その高齢者が介護保険料を納付している市町村に住んでいて住民票があることが条件です。
もし他の市区町村の住所地特例施設に入所している場合や、住民票を移してしまっている場合は、以前にすんでいた市区町村に介護保険料を納付することになっています。
これは全国一律に高齢者施設が整っているわけではないので、施設所在地の財政的な負担を減らすための措置です。
要介護認定
家族に高齢者がいて、介護保険サービスを受けたいと思ったらどこに連絡すればいいのでしょうか?介護保険サービスは65歳以上になれば誰でも利用できるものではありません。
サービスを受けたいのであれば、サービスを受けることが必要であるか、どの程度の介護が必要であるかということを公的に認定してもらわなければいけません。この認定がいわゆる「要介護認定」です。
要介護認定とは、要支援1、要支援2、要介護1~5の7段階とそれに該当しない「非該当」に分かれます。要支援、要介護、非該当とで、利用できるサービスの量と質が変ってきます。
1段階違うだけでも利用額などが大きく違ってきますので、介護認定は様々な人の目を介して認定されます。
要介護認定の認定調査
介護保険サービスを受けるためには、要介護認定が不可欠です。要介護認定を受けたいと言う場合は、お住まいの市町村に申請をします。要支援、要介護の認定は各市町村の介護認定審査会と呼ばれる保健、医療、福祉の専門家によって作られた機関で行われます。
この調査では申請のあった高齢者の心身の状況や周りの環境などを総合的に客観的に調査します。認定調査の際、担当者が認定調査票をもとに高齢者やその家族に質問をします。また、高齢者の日頃の状態を知る主治医の意見も判定の材料となります。
特定の主治医がいない場合は、各市町村で指定する医療機関において診察を受けることになります。できるだけ公平な判断ができるように、コンピュータにおけるデータ処理なども利用して認定に至ります。
もし、認定の結果に納得できない場合は、介護認定審査会に再調査を依頼するか、都道府県の介護保険審査会に審査請求をすることが可能です。
ケアプランの作成
要介護、または要支援の判定が出た場合、介護保険のサービスを受けることが可能になります。しかし、どのようなサービスをどのような頻度で利用するかの計画をまず作らなければいけません。
この計画(ケアプラン)を立てる専門職を介護支援専門員、通称ケアマネージャーと言います。
ケアマネージャーは利用者の高齢者やその高齢者の家族の依頼を受けて、高齢者の心身の状況、生活環境、高齢者本人、家族の要望をできるだけ取り入れて、よりよいサービスの種類や量を決定します。
ケアマネージャーの多くは居住介護支援事務所などに在籍しています。要介護認定の通知と一緒に送られてくるケアマネージャーのリストから選ぶことになります。
どのケアマネージャーに自分の家のプランを一緒に考えてもらえばいいのか分からない場合は、近所で既に介護保険サービスを受けている人
から評判を聞いて探したり、地域包括支援センターなどに相談してみるとよいでしょう。
介護給付とは
介護給付は介護が必要な高齢者が住んでいる市区町村が、その高齢者が日常生活を送るために必要である介護サービスを受けた場合、その介護施設や介護訪問サービスなどの利用額を負担する形で給付されるものです。
あくまでも自治体からサービスをした施設などに支払われるものであって、現金で高齢者やその家族に支給されるものではありません。現段階では介護サービスの高齢者の自己負担はその費用の1割で9割は介護保険から給付されています。
介護給付には、介護給付と予防給付と大きく2つに分類されます。要介護認定ならば介護給付、要支援認定ならば予防給付になります。また、市区町村からの市町村特別給付を受けることもできます。
予防給付とは
要支援の認定を受けて日常生活を送るために、介護サービスを受けている高齢者に給付されるものです。
介護保険制度がスタートした時、要介護認定での要支援は1区分だけでしたが、平成12年の介護保険改正にともない要支援の区分が、要支援1と要支援2と2区分になりました。
急激な高齢化に伴い、要支援認定者が急増したために介護が必要とされる要介護までの間のステップを多く設定し、介護予防の観点からサービスを行い、負担を減らしたい国策です。
できるだけ要介護にならないように回復するための支援サービスに給付されるのが予防給付となります。
市町村特別給付とは
介護給付や支援給付を受けている人が対象で、介護を必要とする高齢者が住んでいる市区町村独自のサービスです。
介護給付や予防給付の限度を越えてサービスを受ける場合などに市区町村が助成する形式です。たとえば、通常のサービスの回数を増やしたり、時間を多くしたりなどです。
通常では配食サービスや紙おむつの供給などは、介護給付では受けられませんがきめ細かいサービスを受けることができる市区町村もあります。