介護予防とは?

介護予防とは?

介護予防とは何か

超高齢化社会を迎える日本において、高齢者がいつまでも元気に過ごすことができるように国が制度として介護予防の取り組みを始めています。2006年に改正された介護保険法に伴い、高齢者ができるだけ要介護の状態にならないように事前に予防することを目的としています。高齢者にとって病気だけが介護の要因ではありません。歳をとれば誰でも身体の機能の衰えと共に心や精神の衰えというものが大きな課題となります。突然の大きな病気が原因で要介護状態になってしまう高齢者はもちろん多いのですが、老化というものは日々の生活の中で少しずつ進んでいくものです。高齢者自分自身ではなかなか自覚できないようなことでも、周りのサポートがしっかりできていれば、その老化現象に早めに対応することも可能です。人間誰しも介護が必要な状態になどなりたくはありませんが、老化という現象を避けることもできません。その為に、できるだけ早期に介護を予防し、高齢者になっても心身共に元気であると言うことを維持するための対策が重要となってきます。

要介護って何?

介護保険で定められた介護の利用限度枠を決めるために設定されている基準のことです。認定の区分は7段階に分かれています。介護認定は住んでいる市町村の窓口で申請し、30日以内に結果が通知されます。認定には、市町村の職員や市町村から依頼された居住介護支援者の専門員が家庭を訪問して介護を必要としている状態なのかをチェックします。また、主治医が医学的見地からも意見書を出します。コンピューターによる一次判定とその後の介護認定審査会による二次判定を経て、正式な認定が降ります。

要支援1:基本的な日常生活はほぼ自分で行うことができるが、要介護になる可能性があるもの

要支援2:要介護1相当ではあるが、介護予防の利用がみこまれるもの

要介護1:日常の部分的な介護が必要な状態で心身が安定していない、また介護予防の適切な利用がみこまれないもの

要介護2:軽度の介護を要する状態。生活面で何らかの助けが必要であるもの。例えば、排泄や食事には見守りや手助けが必要など

要介護3:中程度の介護を必要とする状態。身の回りの世話が自分ではできなかったり、歩行や排泄が自分でできない、物事の理解の低下などがあるもの

要介護4:重度の介護を必要とする状態。身の回りの世話、排泄ができず、歩行が1人ではできない。理解の低下が見られるもの

要介護5:最重度の介護を必要とする状態。身の回りの世話、排泄、食事、歩行がほとんどできず、理解の低下があるもの

非該当:上記に該当しないもの

介護予防の目的

介護予防の目的は大きく2つあります。1つは要介護状態になることをできる限り遅らせること、そしてもう1つは現在までに既に要支援状態の人がそれ以上悪くならないように、もしくは改善するようにすることを目的としています。具体的には栄養指導による栄養の改善、運動機能や口腔機能の向上を目指したゲームなどの活動、色々なレクリエーションを通して高齢者ができるだけ要介護状態にならないように働きかけます。

介護予防とは誰を対象にしているの?

介護予防というのは誰を対象にした制度なのでしょうか?介護予防とは要介護にならないため、また要支援でもより重症化しての要介護にならないためのものです。また、現在は要介護認定されてない人も介護予防の対象者になります。介護認定の見地からみると、介護予防のサービスを受けることができる人は、要支援1、要支援2に該当する人、要介護認定に該当しない人です。要介護認定を受けている人は介護予防のサービスの非対象者と言うことになります。

一般高齢者

65歳以上全ての高齢者の方が対象になります。
・ 特定高齢者
要介護、要支援になる可能性が高いと市町村によって認定された方になります。

介護予防の対象になる人は要介護認定において、要支援1、要支援2に認定された人で介護保険のサービスを受けることができない人と自立して生活できる非該当に当たる高齢者です。要支援1、要支援2に認定された人たちを対象に行われる介護予防と要介護認定を受けていない、もしくは非該当判定を受けた人に行われる介護予防があり、前者は市町村主体の介護予防事業、後者は介護保険から給付が行われる予防給付です。要介護に非該当者であるということは健康であるということです。できるだけ元気でい続けられるように元気なうちから積極的に、介護予防事業を利用して予防してもらいたいというのが国の考えのようです。

地域支援事業とは

2006年の介護保険法改正において、地域支援事業ができました。地域支援事業とは各市町村に住む高齢者が健康で自立した生活を送るということを目的に行われ、その財源は介護保険財政の3%を上限に賄われています。地域支援事業とは、要介護認定で非該当になった人を対象に行われる「介護予防事業」、地域包括支援センターが相談などを行う「包括的支援事業」、市町村がそれぞれ行う「任意の事業」の3つに大きく分かれます。

介護予防事業とは

地域支援事業の中心的存在が介護予防事業です。この介護予防事業というのは高齢者が要介護の状態にならないように、予防的見地から様々な支援サービスを提供し、介護予防を普及させようとするものです。介護保険の一環として行われる介護予防サービスを受けられる人は、要介護認定で要支援判定を受けた人に限定されます。ですから、元気で自立して生活している高齢者は要介護の認定すら受けませんし、介護保険のサービスも利用しません。しかし、せっかく元気でいる高齢者の方をそのまま放置しておいていいのかという問題があります。今は元気でも放置することによって要支援、要介護の状態に陥る可能性があるということです。そこでこれらの人に自治体が介護の予防サービスを提供していくのが介護予防事業です。介護予防事業とは大きく2つに分かれます。

介護予防、生活支援サービス事業

要支援1、要支援2の方や要介護認定を受けていないが、介護が必要になる可能性の高い人を対象にして支援事業です。「訪問型の介護予防」には、認知症、うつ、閉じこもり予防のために、看護師や保健師が体操指導や生活指導、低栄養改善を行います。生活援助としては、ホームヘルパーが日常生活を支援します。また、見守りや食事の宅配なども行います。「通所型の介護予防」では、市町村から委託を受けた高齢者在宅のサービスセンターや保健所、社会福祉法人、民間事業者、NPO法人、医療法人などが介護予防教室をサービスします。内容としては、運動機能の向上、低栄養改善指導、認知症予防、うつ予防、口腔機能の向上トレーニングなどです。

一般介護予防事業

全ての高齢者が対象ですが、必要によっては要支援者でも参加できる事業です。代表的な事業としては、「介護予防のための体操教室」や「介護予防関連の講演会」などがあります。

どうしたら介護予防が受けられるの?

要介護認定を受けていない人は、まず高齢者本人か家族の人が要介護認定の申請をする必要があります。各市町村の福祉課の窓口で申請を行います。2号被保険者の場合は、医療保険の被保険者証が必要です。その後、認定調査があり要介護の程度が決まります。要支援1、要支援2、非該当に認定された人は地域包括支援センターでの介護予防サービスを受けることになります。要支援1、要支援2の人で在宅サービスを受ける場合は介護予防サービス計画のプランを作成依頼する事業者を選び(多くの場合が地域包括支援センターで)、ケアプランを作成してもらいます。要介護1、要介護2の人は介護保険の介護予防サービスを受け、非該当の人は、介護保険外の地域支援事業を受けるという流れになります。

地域包括支援センターとは
高齢者に対する地域密着型ケアの中核として市町村が設けている専門機関です。地域包括支援センターには社会福祉士、保健師、主任ケアマネージャーという専門家が基本的に在籍していますので、あらゆる高齢者に関する相談に応じることができます。お住まいの地域の介護などに関する初めの窓口になりますので、是非利用しましょう。老人介護に関する本人、または家族からの相談から介護予防などにも対応してもらえます。介護予防に関してはケアの利用計画書を作成したりもします。原則としては各市町村に1ヵ所以上は設けることになっていますが、大きな自治体などは10ヶ所以上地域包括支援センターを設けている市町村もあります。

介護保険の予防給付
要支援1、要支援2の人を対象にした予防給付という介護予防サービスが2006年からありましたが、そのサービスのうち2015年の介護保険法再改正により、「介護予防訪問介護」と「介護予防通所介護」は2017年までに国の買う後保健の予防給付から市町村の地域支援事業へと移行されることになりました。市町村の地域支援事業になるとサービス内容やその価格は各市町村ごとに変更可能になります。この2つのサービス以外のサービスは従来通り介護保険の予防給付の範囲内で行われますが、以前に受けていた要介護者向けの介護給付を併用して利用することはできません。

介護保険財政の圧迫
超高齢化社会を迎える日本において、介護保険の費用は年々増加の一途を辿っています。介護保険制度が開始された当初は3.6兆円だった費用が、現在ではそのおよそ2.5倍にまで膨れ上がり介護保険の財政はひっ迫しています。国としてはこのままこの状態を放置するとどんどん介護保険の給付利用者が増えるということに危機感をもち、この費用を減らすために介護予防策を考えたという訳です。介護保険を利用する人が減り、金額が少なくなれば介護の財政にも明かりが見えるというのが厚生労働省の考えです。

介護予防は普及しているのか?
2006年の介護保険法改正に伴い、厚生労働省や各地方自治体は介護予防を普及させるために様々な宣伝活動を行い、プログラムを用意しています。しかし、残念ながら介護予防の普及成果はさほど上がっていないというのが現状です。色々な趣向をこらしたプログラムや自分の健康を守るためのチェックリストなどを使って検診を行ったりはしていますが、介護予防事業の参加率は全国的にも上がっていません。介護予防事業のサービスを受けている65歳以上の高齢者は全体の0.5%とかなり低いのが現状です。こういった結果から見てもまだまだ介護予防というものの必要性、重要性が高齢者に広がっていないと言わざるを得ない状況と言えるしょう。

なぜ普及しないのか?
介護予防が普及しない理由は色々ありますが、まず要介護認定されていない比較的元気な高齢者には介護予防の考え方がほとんど浸透していないということでしょう。最近の65歳というのは比較的な元気であるため、自分はまだまだ大丈夫という考えの人が多いのです。何事もない平時にこそいざと言う時に備えるということが大切なのですが、なかなか実行できないものです。特にまだまだ元気な男性などは、積極的に介護予防の講習会などには参加しないという傾向があります。2025年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になります。全人口の約25パーセントが後期高齢者になるという驚異的なデータがあります。これだけの高齢者が全く介護予防の意識を持たず、ずるずると要介護の生活に陥ると間違いなく、介護や医療の財政が破綻します。そうならないためにも、国や地方自治体がますます力を入れて広報活動を盛んにしていく必要がありますし、民間などにおいても強く意識をもって介護予防の普及に努める必要があります。

介護予防手帳の交付
なかなか普及が進まない介護予防のために、各自治体によっては「介護予防手帳」というものを配布しています。これは高齢者本人が自分の暮らしについて文字情報を記録することにより、自分自身の介護予防に対する自覚を促し、認知症などを早期に発見したり、早めに専門機関を受診するといったことに繋げるものです。また、地域包括センターや介護保険事業者や、高齢者の家族などが情報を共有するために役立ちます。また、支援を具体的に広げていく上でのガイドブックにもなるように作成されています。いつまでも高齢者が元気に自分らしく暮らしていくために、自分自身の生活を客観的に見つめ、介護プログラムを実践したり、サービスを利用し、きちんと資料として残しておくことが大切です。

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