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在宅介護と訪問介護
歳をとって介護が必要になっても老人ホームや介護施設には入りたくないと考えている高齢者、慣れ親しんだ家でできるだけ過ごしたい、また、特別養護老人ホームなどの公的な介護施設に入居したいけれどもどこも入居のための行列ができてなかなか入れそうにない人などは、自宅にいながら家族による介護を受けながら日常生活を送るという在宅介護を洗濯することになります。
しかし、家族だけの介護というのは実際非常に困難である場合が多かったり、家族であるがゆえのストレスは想像以上に大きいものでなかなか悩みはつきません。そこで、家族が行う介護などを代わりに行ってくれるホームヘルパーの訪問介護サービスです。
介護保険の訪問介護
超高齢化社会に突入している日本において、年々介護保険を利用する人は増加しています。
訪問介護サービスを利用する人も急激に増加しているのですが、その数に訪問看護サービスをする事業者の数が追いついていないという現状、いわゆる人手不足という問題があります。
その為に、以前に比べて自己負担額が増えたという人もいますし、要介護認定が厳しくなっているという現状があります。できるだけ自宅で過ごすための訪問介護サービスも常に厳しい状態にあるということを理解しておくということが大切です。
訪問介護の種類
ホームヘルパーが高齢者の自宅を訪問し、日常生活を送るために必要な介護をしてくれるのが訪問介護ですが、そのサービスは大きく身体介護と生活援助に分かれます。
身体介護
食事の介助
体位の変換
外出介助
清拭や入浴
服薬介助
排せつ介助
起床・就寝介助
身体整容
など
生活援助
食事の調理
洗濯
生活必需品の買い物
薬の受け取り
掃除
ごみだし
配下膳
衣類の整理
ベッドメイク
など
訪問介護サービスで頼めないこと
訪問介護サービスはあくまで利用する高齢者の身の回りのお世話や家事のお手伝いをするという支援サービスです。
その為に、家の用事など何でもお願いするとやってもらえると勘違いしている人がいます。介護保険サービスの訪問介護にはできることとできないことがきちんと決まっていますので注意しましょう。
例えば、利用する高齢者以外の家族への食事の用意や、高齢者が使用する部屋以外の掃除、お客様の対応や車の管理など高齢者の援助に関係のないこと、また、庭の草むしりや花の水やり、植木の手入れ、家具や電化製品の移動や修理、部屋の模様替え、大掃除、窓拭き、フローリングのワックスがけ、家の修理やペンキ塗りなど日常生活の援助に該当しない行為は頼むことができません。
もし、それらのことを依頼したのであれば、民間の事業者や地域のシルバー人材センターなどに問い合わせて全額自己負担で請け負ってもらう必要があります。
なお、要支援1.2の人は身体介護と生活援助に区別が特にありません。介護予防の観点から利用する高齢者本人ができるだけ自分でできる家事などを増やせるように支援するという考えでサービスされます。
どんな人が訪問してくれるの?
訪問介護に来てくれるスタッフをヘルパーさんと一般的には言われていますが、基本的に訪問介護員はホームヘルパー1級、ホームヘルパー2級や介護福祉士の資格を持っているひとが訪問介護をします。
これらの資格を持っているひとは専門職で日頃から訪問介護の仕事に詳しい人ですので、できるだけ利用者が安心して介護をうけられるようにアットホームな温かい雰囲気を作ってくれます。
また、事業所にもよりますが、できるだけ担当のヘルパーが訪問するようにしているところも多いですので安心しましょう。
もし、やむをえない事情などでホームヘルパーの担当者を変えて欲しいなどの要望がありましたら、サービスの事業所や担当のケアマネージャーに相談してみましょう。
訪問介護サービスの対象者と自己負担額
訪問介護サービスは要支援1.2、要介護1~5の人全てが受けることができるサービスです。
自己負担割合が1割の人の場合、要支援1.2で週1回訪問介護サービスを受ける場合は、月額約1200円、週2回の利用で月額約2400円、要支援2の人が週2回利用を超える場合は月額約3900円です。
要介護1~5の人の場合、利用するサービスと時間によって自己負担額が変ります。
食事や入浴、排せつなどの身体介護を受ける場合、
・20分未満の利用で、1回約165円
・20分以上30分未満の場合は、1回約250円
・30分以上1時間未満の場合、1回約390円
・1時間以上、1時間半未満の場合、1回約560円
となります。
料理や洗濯などの生活援助の場合、20分以上45分未満の利用で1回約230円、45分以上の利用で1回約220円です。
また、病院の通院の乗り物の乗車、降車などの介助は1回約100円ほどです。
訪問介護サービスを利用するには
訪問介護サービスを利用したい人は、担当のケアマネージャーか地域包括支援センターに相談すると利用する高齢者の状況に合わせた訪問介護のケアプランを立ててくれます。
訪問介護サービスは要支援、要介護認定を受けている人は利用することができますが、要介護認定がない人は介護保険を利用することができません。要介護認定を受けていないひとは申請をして要介護認定を受ける手続きをしましょう。
また、要介護認定で非該当になってしまった人でも全額自己負担ですが、訪問介護サービスを一般の事業者から受けることができますので事業者に問い合わせてみましょう。
介護保険以外の訪問介護
介護保険サービスの適応を受けて訪問介護を受けると自己負担割合が基本的に1割負担なのでリーズナブルな価格でサービスを受けることができます。
しかし、もう少しサービス内容を多くして欲しい、頻度や利用時間を延ばしたいという希望はあっても要介護認定に沿ったサービス内容になるのでなかなか充分なサービスができないという現状もあります。
また、要介護認定を受けていない非該当の人でも訪問介護サービスを一般の事業者から受けることができます。
介護保険に該当しないサービスを受けるには、費用はもちろん全額負担になるので割高感があります。
しかし、要介護認定を受けていない人や介護保険の規定以外のサービスを受けたいという人は必要不可欠なサービスですので、場合によってはある程度自己負担が多くなりますが、介護保険でも訪問介護サービスと、自費での訪問介護サービスを組み合わせてみるという方法も考慮してみましょう。
訪問介護のメリット
高齢になると、できるだけ住み慣れた家や町を離れたくはありません。
しかし、老人ホームなどの施設が遠方にある場合は環境が違う地域に暮らすことになります。新しい環境ということに高齢者が慣れるということは、若い世代が考えるほど簡単なことではありません。
精神的ストレスが大きく認知症などの発症に引き金を引いてしまう可能性もあります。訪問介護を利用することによって近所の友人や知人との人間関係を保ちながら暮らすことができます。
しかし、家族が高齢者の介護を単独で行うにはなかなかハードなことも多くあります。外部の介護者が家の中に入ることで肉体的な負担だけでなく精神的支えにもなります。
介護の孤独、閉塞感もその気持ちをよく分かってくれる理解者が一人でもいると心が休まります。介護する職員はプロですのでそのあたりのこともよく理解して、時には楽しむ方法も教えてくれます。
独り暮らしの老人が増加していますが、独り暮らしの老人にとって訪問介護は大きな支えです。細かい家事や通院の介助、話し相手など、少しの手助けがあればちゃんと一人で生活できるという高齢者は多くいます。
その為に、訪問介護を利用するということが非常に有意義です。
また、家族が離れて暮らしている場合は安否確認をしてもらえるので本当に安心です。介護職員が訪問してくれる日を心待ちにしている高齢者は珍しくありません。生活にハリがでますし、社会とのつながりができます。
また、老人ホームなどに入所するよりも在宅介護の方が費用が安いというのが一般的です。費用の面から考えてサービス内容も調節し易いですし、深夜の訪問などのサービスがある事業者もあります。
訪問介護のデメリット
できるだけ住み慣れた地域や家で過ごしたいという高齢者の希望を叶えるために在宅介護がありますが、自宅で訪問介護を受けながら家族が介護をするというのは予想以上に大変なことがあります。
訪問介護サービスは老人ホームなどの施設に入所するよりも金額的な負担は少ないのですが、その分、訪問介護サービス以外の全ての時間を家族が介護しなければいけません。
これは介護期間が長期になればなるほど肉体的負担と精神的負担が大きくのしかかります。夜間の巡回サービスなどを行ってくれる事業者もありますが、夜間の排せつなども家族が介護するとなると介護負担が非常に大きくなります。
夜間サービスも緊急時にはなかなかすぐには対応できないという現状があるのでますます家族の負担が大きくなります。
また、どうしても介護サービスを受ける必要がある人が訪問介護サービスを受けながら在宅生活をすると社会とのつながりが薄くなります。
身体的な障害があるとかなり積極的にならないとわざわざ外出するという機会もなくなります。そうすると認知症になり易い状態になったり、寝たきりになる確率が施設入所者よりも高くなるという現実があるのです。
施設の入所は費用もかかりますし、すぐには入所できるところも少ないですが、家族の介護負担が極端に少なくなりますし、高齢者の人との関わりを保つことができるので施設入居希望者が増えています。
設備の面でも、施設ですと身体的機能を考慮したトイレやバス、廊下、階段などのステップになっていますが、自宅をバリアフリーにそって改修しようとすると補助金が出ると考えても金額的に負担になります。
訪問介護サービスの現状
訪問介護サービスには頼めることや頼めないことなど規則や決まり、範囲が決まっていますが、現状ではどのようなサービスが行われているのでしょうか?
訪問介護サービス事業は他業種の企業ながら介護事業に新たに参入している大手企業もたくさんありますし、地域密着の少人数で行う事業所もあります。
例えば、生活援助の食事の準備、調理などはどのようなメニューを作ってくれるのでしょうか?
担当するヘルパーさんにもよりますが、ヘルパーさんは高齢者の方が食事を1日の大きな楽しみにしていると理解しています。その為にできるだけ栄養バランスを考えたり、食べやすい調理で、お好きなメニューに添えるように努力してくれます。
食材をできるだけ無駄なく使い、好きなものは常備菜にしてくれたりする場合もあります。
生活必需品の買い物などは、基本は利用者宅から一緒に近隣の店舗に行って購入するというのが基本ですが、事前に連絡すると利用する高齢者が必要な商品が分かれば、事業所からヘルパーが店舗に行って購入して利用者宅に持っていき、後で料金を支払ってもらうということも出来ます。
買い物には日常生活での必需品でなければいけないという規則がありますのでビールやタバコ、仏壇の花などは厳密に言えば日常生活に直接関わりないものなのでヘルパーが買い物を手伝うことができないことになっていますが、現実問題としてその高齢者には日常不可欠なものであると判断する場合は介助をするヘルパーが存在するかもしれません。
しかし、規則では日常生活に関わりがないので断られても反論はできないでしょう。線引きをどのあたりでするかということは非常に難しいという現場の状態があります。
利用者のモラル低下
また、利用者のモラル低下も問題になっています。
例えば、利用者本人のものでないと洗濯できないということになっているにも関わらず、わざと家族の洗濯物も混入したり、ヘルパーが作った料理の味付けが自分好みでないと必要以上に文句を言ったり、ヘルパーが訪問すると分かっているのに衣服を身につけずに迎え入れるなどの行為です。
介護ヘルパーもプロですから、これらの事例に付いても対処はしますが、これは介護ヘルパーに対する一種のモラルハラスメントになりますので利用する高齢者も自覚する必要があります。
訪問介護サービスは仕事とはいえ、人と人とのつながりです。お互いが尊重しあう関係であることによってヘルパーはよりきめ細かいサービスをしようと心がけますし、そのことによって利用者も気持ちよく生活できます。
単なる事業者とお客様の関係でない関係を上手く築いて、家族以上に信頼できるヘルパーさんとの付き合いをする高齢者も少なくありません。