口腔ケアで介護予防!お口の健康状態の把握と健康維持に必要な7つの習慣

介護予防口の健康

誰でもいつまでも自分の歯で食べ物を美味しく食べて、楽しく毎日を過ごしたいと思います。しかし、なかなか現実にはそれが叶わないということがあります。

食べられなくなってはじめて口の健康維持が大切であったかということを自覚するのですが、食べられなくなってからでは遅すぎます。

そうなる前に何らかの口腔ケアを心がけることで多くの人が健康を維持できることに繋がるのです。毎日の些細な習慣の積み重ねが大切です。

家族の方が、できる限り高齢者のお口の健康状態にも気を配り、すぐにでも口腔ケアを始めて、いつまでも健康な歯を維持し、高齢者にいつまでも楽しい人生を過ごしてもらいましょう。

高い意識が大切

元気な高齢者は皆、自分の身体に関心をもち、それを維持するための努力をしています。歯磨きがもちろんのこと、顔や口、舌の体操やマッサージ、歯の主治医を持ち定期的にケアしているなどです。

身体に関心を持って元気に過ごしたいという人は早寝早起きで、食事をきちんと規則正しく食べ、飲酒をせず、タバコも吸わないなど意識の高い人も多いです。

歯の健康も維持できれば鬼に金棒です!

歯は食べるだけに使うものではなく、肩こり、腰痛など、頭痛などあらゆるところに歯の状態が影響してきます。健康を維持したいのであれば歯や口腔内のケアを無視できません。

できるだけ高い意識をもってケアしていきましょう。

口腔機能向上の必要性

口腔機能には、「噛み砕く」「飲み込む」「唾液を分泌する」「表情を作る」「言葉を発音する」「呼吸する」などの役割があります。このような機能が低下してくると食べることだけでなく、人とコミュニケーションを取るということが困難になってきます。

健康という面でも口腔機能は重要ですが、社会とのコミュニケーションの面においても非常に重要なのです。

人とのコミュニケーションを取ることができないということは、引きこもりやうつ病などの原因にもなりかねません。

もちろん、口腔機能の低下により十分な栄養が取れなくなる恐れもあります。充分な栄養を摂ることができないと、低栄養につながり、要介護への悪のスパイラルが始まります。

また、噛むことができないと誤飲を頻繁に引き起こし、肺炎などの命に関わる疾患になります。このようなことから、高齢者の口腔機能の向上や口腔衛生の重要性が見直されてきています。

口腔機能訓練や口腔ケアを高齢者の日常の習慣に定着させるという取り組みが広がっています。

2006年の介護保険制度改正により介護予防のサービスとして口腔機能向上も取り上げられました。

高齢者の口腔内の特徴

高齢になると身体の変化と同様口腔内も変化していきます。では高齢者の口腔内の特徴とはなんでしょうか?

歯と歯の周りの組織が変化する

歯と歯肉の境がどんどん減ってきたり、歯肉が弱ってきて歯の根までが外に露出してしまうことにより虫歯ができやすくなります。

歯槽骨もだんだん少なくなります。

歯肉が炎症を起こしやすくなる

歯肉がどんどん減って歯根部が露出してくるので、歯に歯石や歯垢が溜まりやすくなります。

入れ歯の人は入れ歯が歯肉にあたったりするので刺激を受けやすくなり炎症を起こしやすくなります。

口腔内の細菌が増えやすい

口の中は適度に温度管理されていますし、湿度かあるため細菌の温床になりやすいものです。

歯や入れ歯に付着している細菌にとって最高の環境なのですから、かなり意識的に細菌を除去していかないとどんどん細菌が増殖していきます。

舌や口腔粘膜の状態が変化する

高齢者が若い人に比べて唾液の分泌量がぐんと減ってきます。

このことにより、舌や粘膜が変化し味覚障害になったり、口臭がひどくなったりします。

入れ歯が合わなくなる

入れ歯というものは最初が合っていても、使っているうちに入れ歯が磨り減ったり、自分の口腔内の変化などにより徐々に合わなくなってきます。

入れ歯が合わないのにそのまま使用し続けると食べ物を噛めなくなるばかりか、自分の歯や歯肉をどんどん傷つけることに繋がります。

高齢者に多い口腔トラブル

高齢者に起きる口腔内の変化を説明しましたが、では、高齢者に起きやすい口腔トラブルとはなんでしょうか?

誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)

口腔内の咽頭では食べ物が通過すると次に食べ物を胃に導く食道への入り口と、空気が肺に入るための気管に分かれていますが、食べ物を飲み込む機能を低下すると食べ物や唾液が誤って気管に入ってしまいむせるという現象が起きます。

この時に口の中の細菌が肺の中に入り炎症を起こすことを誤飲性肺炎といいます。

高齢者にとって誤飲性肺炎は命にも関わりますし、寝たきりになる可能性も含んでいますので充分注意しなければいけません。

ドライマウス

高齢者になると唾液の分泌が減ります。原因は色々ありますが、薬の副作用やストレスなどでも唾液の分泌は減ります。

口の中がどうしても乾燥しやすくなりますので、発音しにくかったり、食事がのどを通りにくくなったり、のどが渇くといったことが起きます。

唾液の重要性

唾液は普通一日で1~1.5リットルほど分泌されます。また、色々な役目を持っています。口腔内の湿度を保ち、乾燥を防いだり、消化液としての働きもあります。

また、食べ物を飲み込みやすくしたり、食べ物の味を舌で感じやすくする効果もあります。細菌から口の中を守りますので虫歯にもなりにくいですし、歯を石灰化させて守ります。口の中を湿らすことによって発音もしやすくなります。

こう考えると口腔機能の維持には唾液は非常に重要です。

しかし、高齢者になると唾液の分泌が減少してきますので、それを予防するためにも唾液の分泌を促すマッサージをしましょう。

高齢者は体に関する薬を色々飲んでいる場合が多く、降圧剤、抗うつ剤、パーキンソン病の治療薬、睡眠薬、利尿剤、抗ヒスタミン剤などに唾液分泌を抑える薬がありますので、服用している人は特に注意しましょう。

口の健康チェック

口の中の健康は体全体の健康、心の健康にも繋がります。自分では大丈夫と思っていても、口の中の機能は低下しているかもしれません。

客観的に自分の口をチェックしてみましょう。1つでも当てはまるものがある人は要注意です!

食べ物を噛んで飲み込む機能の低下

・ 食事にかかる時間が前よりも長くなった気がする
・ 固いものよりも柔らかいものを好むようになった
・ 奥歯がしっかり噛み締められない

ドライマウス

・ 口が渇いて話しづらい
・ 口が渇いて飲み込みづらい

飲み込む機能の低下

・ 薬を飲むとき喉によくつまる
・ 食後に口の中に食べ物がよくつまる
・ お茶やお味噌汁などでむせることが多い
・ 食べこぼしがある

歯周病の恐れ

・ 風邪を引いたり、疲れた時に歯肉が腫れた
・ 歯が浮いている感じがする
・ 歯がグラグラする
・ 歯と歯の間に食べ物が挟まる
・ 歯茎がかゆい
・ 口臭が気になる
・ 歯が以前より長くなった気がする
・ 歯肉が赤い
・ 朝起きたときに口の中が粘ついている

虫歯の恐れ

・ 歯の付け根が黒い
・ 熱い食べ物を食べるとしみる
・ 口臭がする
・ 噛むと痛い
・ 甘い食べ物がしみる
・ 治療したことのある歯が痛い

口腔機能が影響すること

口腔機能の低下を自覚したら、放置せず適切な対応を取りましょう。口腔機能を放置すると体のいたるところにその影響が表れます。

歯周病のある人は糖尿病になりということを知っていますか?歯周病の存在により血糖値は上昇しやすくなるというデータもありますし、糖尿病の人が歯周病の治療を行うことで糖尿病が改善したという例もあります。

また、口腔内の状態が悪いと食欲不振になり低栄養になりやすいです。口臭細菌が増えると誤嚥性肺炎の危険もあります。

アルツハイマー型認知症の人は歯のない人や入れ歯の人が多いですし、寝たきりの人は歯のない人が多いのです。

逆に歯がちゃんと揃っていて噛み合わせの良い人は運動能力の低下が緩やかですし、下半身の骨密度も高い人が多いです。

このようなことからも口腔機能が及ぼす健康への影響が非常に大きいことが分かると思います。

健康な口腔内とは

口腔機能が健康状態にあると、体にも良い影響があります。まず、食事が美味しく食べることができます。このことは介護予防の見地からも非常に重要です。

また食べ物を美味しく食べられると元気が出ますので、社会とのコミュニケーションを取ろうとします。そのことで人との会話が増えたり、脳が活性化されますし、身体機能の回復も期待できます。

口腔機能の向上が介護予防にとって、非常に重要であることが理解できたのではないでしょうか?

口の健康維持のための7つの習慣

歯磨き、入れ歯の手入れ

歯磨きは口腔ケアの基本です。歯と歯茎をしっかりとブラッシングする必要があります。食事の後や寝る前に付着した食べカスや歯垢をかき出しまします。

要支援などの高齢者は自分でブラッシングするのがなかなか困難な場合もありますので、電動歯ブラシなどを使って歯を磨いたり、介護者がときどき歯をきちんと磨けているかチェックしましょう。

入れ歯の高齢者も同様ですが、入れ歯を清潔にすることの必要性を理解してもらい、洗浄などをしっかりするようにしてもらいましょう。

高齢者の中には入れ歯を外さずに歯磨きしている人もいますので、面倒がらずにきちんと入れ歯を外して歯を磨きましょう。入れ歯にはデンチャープラークという歯垢によく似たものが付きます。

このデンチャープラークはカンジダというカビの一種が含まれており、粘膜の炎症を起こしますので入れ歯専用のブラシもありますのでしっかりブラッシングして除去しておきます。また定期的に入れ歯洗浄剤を使ったほうが良いでしょう。

歯ブラシなど歯磨きの時に使う用具が清潔であるかということも周りが気をつけておく必要があります。独り暮らしの高齢者などには訪問した際に用具のチェックも忘れずに行いましょう。

うがい

歯磨きの際のうがいも重要ですが、口の粘膜の清掃だけなら、うがいでも充分な効果が得られます。

うがいをする習慣があれば風邪等の予防にも繋がりますし、口の中がすっきりして気持ちが良いものです。

口の乾燥も防ぎますので粘膜の損傷予防にも繋がります。独りで洗面所へ移動しづらい場合は介護者が付き添い、うがいしている時は姿勢維持の介助を行いましょう。

舌の洗浄

舌に付着する舌苔を定期的に除去することで、口臭が緩和されますし、口腔内の清潔がぐんとアップします。

舌の洗浄はあまりする習慣がないので知らないという人も多いのが現状です。

舌の洗浄には舌専用のブラシを用いますが必ず濡らしてから使用します。特にしつこい汚れに対しては通常使っている歯ブラシで対応しても大丈夫です。毎日、舌のブラッシングができるのであれば、普通の歯ブラシで軽く歯磨きの際に一緒にブラッシングしると良いでしょう。

唾液分泌マッサージ

高齢になると唾液の分泌が減るために口腔内がドライマウスになります。このことから誤嚥したり、食べ物が食べづらくなります。

唾液を分泌するためのマッサージがあるので毎日の習慣にしてみましょう。

まず、人差し指から小指までの指の腹を頬に当てて、上の奥歯の辺りを後ろから前に10回ほど回します。このことによって耳下腺が刺激されて、唾液がじわっと出てきます。

両方の親指を喉の下の柔らかい部分にあてて耳の下あたりまで5ヶ所ほど押さえて顎下腺に刺激を与えます。それを各5回ずつ繰り返しましょう。最後は両方の親指をそろえて喉の真下から手を突き上げるようにぐっと押します。これを10回ほど繰り返すことにより舌下腺が刺激されます。

簡単なマッサージですので高齢者自身でもできる場合は毎日の習慣にすると良いでしょう。

口や顔の体操

口や顔の筋肉を動かすことで口腔機能の低下を防ぎます。できれば毎朝顔を洗って鏡を見ながら、口と顔の体操をしましょう。まず、頬の筋肉を使います。しっかり目を閉じて口をすぼめます。

つぎに目と口を一気にぱっと開きます。また頬膨らませて、今度は逆に頬をすぼめます。唇の運動では「あ、い、う、え、お」としっかり大きく口を動かして発音します。舌の運動では舌を出して、その下を上下に動かします。そして次に左右に動かします。

このことによって舌を動かす力を強くします。最後の舌で口の中に円を書くようにぐるぐる回します。反対周りもしっかりしましょう。

朝にこれらの運動をすると目覚めがすっきりしますので気持ちも良くなります。

しっかり噛んで食べる

食べ物をしっかり噛むということで、誤嚥しにくくなりますし、また消化も良くなります。噛むと脳への刺激にもなりますのでしっかり噛んで食べる習慣は大切です。柔らかいものばかり食べないでしっかり噛むことができる食事を摂ることが理想です。

一口で20回から30回ほどしっかり噛めば唾液の分泌にも繋がります。

定期的に歯科検診

3~6ヶ月ごとに定期的に歯科医の診断を受けましょう。かかりつけの歯科医を持つと歯の状態がわかり易いので安心です。

自治体によっては介護予防の観点から歯科検診を行っていますので、上手く利用して口腔内の健康維持に努めましょう。

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