認知症は脳や体の疾患によって知的機能が段々と低下し、日常生活をも困難にする病気です。
有名な認知症であるアルツハイマー病は一旦発症してしまうと、なかなか現段階では治療が難しい病なのですが、認知症の中には早期発見、早期治療によって進行の速度を遅らせることが可能です。
しかし、できるだけ認知症にならないために、予防をしていくということがもっとも大切です。ご家族が認知症について学び、高齢者と協力しながら、認知症を予防していきましょう。
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認知症の種類
認知症にはアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症、レビー小体型認知症と大きく3つに分けられます。
認知症の約半数はアルツハイマー型の認知症です。次に多いのが高血圧によって脳血管が切れて脳内出血を起こして発症する脳血管性認知症です。もう一つが認知症の2割ほどを占めるレビー小体型認知症です。
日本では昭和初期以前は、アルツハイマー型認知症は今ほど多くはなかったといわれています。その頃から現在に至るまでに日本人にどんな変化があったのかというのが認知症予防に役立つと考えられています。
やはり大きく昔と変った点は、食生活の欧米化と生活習慣ということです。
一昔前までは認知症は高齢者に限定されたものでしたが、最近では若年性の認知症を発症する人や人間に限らず人間に飼われているペットにまで認知症があり、生活習慣の変化に認知症の何らかの原因があるとされています。
日本における認知症患者は年々増加傾向にあり、85歳以上の高齢者においては4人に1人の割合で発症しているというデータがあり、社会問題としても最重要課題の一つになっています。
認知機能とは
認知機能とは、記憶力、判断力、理解力など知的な機能を指します。その中でも認知症患者は記憶力、計算力、論理能力の低下が見られます。
高齢になると誰しもこれらの認知機能は下がってくるのですが、最新の研究では、記憶力や計算力はどんなに高齢の方でも訓練すれば向上し、改善するということが報告されています。
訓練をすることにより機能が回復するのであれば認知予防のためにも、出来るだけ早く予防をすることが大切になってきます。
認知症予防は生活習慣の見直しから
認知症の予防に有効なことは生活習慣の見直しです。遺伝的要素で認知症になることもありますが、食生活の見直し、運動の見直し、生活習慣の見直し、脳を使うという4つの要素が重要です。それぞれ詳しくみていきましょう。
食生活の見直しで認知症を防ぐ
認知症予防には野菜、魚、果物を中心とした食事が有効です。特に血中コレステロール濃度を下げて、動脈硬化を抑えるDHAやEPAなどの不飽和脂肪酸が含まれる食品が有効とされていますが、どういった理由があるのでしょうか。
認知症と動脈硬化
認知症は大きく分けると、脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症の二つのタイプに分かれます。高齢になると血管が固くなりしなやかさを失い血流が悪くなり、脳への血流が上手くいきません。そのために脳細胞が壊れ、認知症となります。
ですから、動脈硬化している人は認知症になるリスクが高いといえます。
そこで、認知症予防にはEPAとDHAが注目されているのです。EPAとDHAは体内では合成できない栄養素です。
EPAとDHA
DHAとは不飽和脂肪酸の一種で血中コレステロールを下げるので、血液がサラサラになります。そのことで中性脂肪が減り動脈硬化を予防しひいては認知症予防になります。
DHAは一日に1グラムから1.5グラムほど摂ることが理想で、いわしで2匹分、マグロの刺身なら5切れほどです。EPAも同じように不飽和脂肪酸ですが、EPAはDHAほど脳の活性化、記憶の向上にはつながりませんが、血栓症の予防に効果的です。
認知症予防の効果が期待できる食品はいわゆるアンチエイジングの食材と共通します。
すなわちDHAやEPAが多く含まれる食品やポリフェノールやビタミンCが多く含まれる食品が認知症予防に効果のある食品になります。
認知症予防に効果のある食材
- さば、さんま、いわしなどの青魚
- マグロ、サケ、ウナギ、ぶり
- アーモンド・ナッツ類
- ゴマ
- ベリー類
- 海藻類
- きのこ類
- 緑黄色野菜
- 納豆
- ウコン
- 卵
- レバー
- 緑茶
- とり胸肉
- ざくろ
これらの食品を上手く組み合わせたレシピでバランスよく食べるというのが認知症予防には重要です。
認知症にカレーが効果的?
また、最近カレーが認知症に良いといわれるようになりました。カレーに含まれているスパイスに抗酸化作用があるからだといわれています。実際、インド人には認知症が少ないというデータもあります。カレーのスパイスのウコンに含まれるクルクミンがアルツハイマー病に効果があると報告されています。
カレーであれば何でも認知症に効果があるわけではありませんので注意しましょう。
アルツハイマー型の認知症には赤ワインも効果があるとされています。
認知症予防に良くない食材
- 肉類などの動物性脂肪
- アルコール類
- 小麦製品(うどん、パン、ラーメンなど)
認知症に良くないという理由で、一気に食事から消えてしまうのは寂しいものです。なるべく食べないようにしたり、量を少なくしたりして心がけるようにしましょう。
和食が認知症予防に効果的
認知症予防に効果的な食品を多く取り入れたメニューを考える上では、和食がもっとも適しているといえます。
バランスよく、色々なものを食べることが大切です。メニューが偏ったりすると、かえってバランスが崩れてよくありません。
特に夜に納豆を食べると脳梗塞や動脈硬化の予防になると言われています。
運動の習慣の見直しで認知症を防ぐ
運動をすることによって認知症が改善されます。運動が苦手という人でも一日に30分程度の運動を毎日することで効果がぐんとアップしますのでチャレンジしてみましょう。
散歩やラジオ体操から始めよう
特別な運動でなくてもかまいません。家の近所を散歩したり、自治体が行っている高齢者向けの体操教室などに参加してみましょう。人の多いところにいくのは嫌だなと思っているならば、ラジオ体操などは手軽に誰でも気軽に挑戦できますのでおすすめです。
テレビなどでも効果的な体操を放送していますので少しずつ体を動かしましょう。
地味な運動ですが、横になりがちだった高齢者が立ち上がったり、歩けるようになったりと成果が報告されています。
拮抗体操(きっこうたいそう)
アルツハイマー型の認知症には有酸素運動が非常に効果的です。有酸素運動の代表的なものには水泳やジョギングがあります。
認知症予防に一番効果があるとされているのは「拮抗体操(きっこうたいそう)」です。
拮抗体操とは2つの対称的な動作を同時に行う体操のことです。例えば、右手で鼻をつまみながら、同時に左手は右耳を触るというような運動です。単純なことのようですが、左右が違う動きをするということは脳に刺激を与えます。
頭の体操にもなるので、簡単な体操から是非はじめてみましょう。
嗜好品の見直しで認知症を防ぐ
タバコと認知症
タバコは健康には大敵です。タバコを吸うと自分に害があるだけでなく、家族や周りの人間にも健康被害が及びます。
健康にとってもタバコは悪影響を与えますが、認知症予防の面から考えると、吸わない人の2倍もの認知症リスクがあると分かってきました。
タバコを吸うと脳の血管が老化し動脈硬化になります。動脈硬化になると脳への血流が悪くなり、脳細胞が死滅して認知症に直結します。
アルコールと認知症
以前から、大量にアルコールを飲酒する人は脳萎縮の傾向が高いとされています。アルコール量と脳の萎縮の関係も正比例の関係であることが分かってきました。
逆にアルコールの摂取をやめると脳の萎縮も改善されます。また、アルコールの少量から中量の摂取は認知症の危険性については関係がないということも分かってきていますし、むしろ少量であれば予防に繋がるという報告もあります。
このことから、大量にアルコールを摂取している人は直ちに、量を減らすべきであることが分かります。
頭を使う習慣をつけて認知症を防ぐ
脳トレの存在はよく認知されています。高齢者が計算ドリルをしたり、パズルをしたり、ゲームをしたりして頭を使うことによって認知症を予防しようというものです。
中にはマージャンンなどを取り入れたレクリエーションもあるようですが、医学的にこのようなものが認知症予防に役立っているかということは、未だ証明されていないようです。
しかし、実際に現場においてはこのような頭を使う取り組みが認知症に効果を発揮しているといわれています。
ゲームなどは駆け引きする相手が存在し、勝ち負けのあるゲームですし、手も頭も使い、気持ちの楽しくなれば認知症でなくても、高齢者でなくても精神的に楽しい気分になります。要は楽しむことが大切です。
脳トレでなくても、趣味で編み物をしたり、料理を習ったり、園芸をしたり、絵画を描くということが同じような効果をもたらすと考えられています。
もう歳だからと出来ないと決め付けないで、柔らかい気持ちでチャレンジしてみることが大切です。
また、効果的なのは頭を使いながら運動をプラスすると認知症予防に効果のあるBDNFの増加につながるとされています。
例えば、しりとりをしながら階段の上り下りの運動をするなどの運動です。身近なところでいうと、一緒に会話しながら散歩することも似た効果が期待できます。こういった運動も毎日続けるとより効果的です。
遊びだと思わない
高齢者の中には、こちらが認知症予防のためにしている「レクリエーションである」と思ってやっていることでも、遊びというので罪悪感をもったり、馬鹿にしたりされていると感じて参加したがらない人がいます。
特に現役時代に会社でバリバリ働いてきた方などは、高齢者として扱われるのも嫌いますし、ちょっと簡単な遊びや訓練要素があるゲームなどは参加したくないという場合があります。
そのような人には、自尊心を傷つけるようなゲームを強いては逆効果で心を閉ざしてしまいます。
出来るだけ、その人の興味が持てること、ちょっと難しいもの、高尚な趣味などを紹介するようにしましょう。囲碁や将棋、盆栽、最新のテレビゲームなどを活用するのもよいでしょう。
無趣味で閉じこもりがちな人の認知症予防
認知症予防の観点からも、介護予防の観点からも出来るだけ高齢者が外に出て、他の人と話したり、運動することが有効とされていますが、どうしても趣味もなく家に閉じこもりがちな高齢者はどうすればいいのでしょうか?
無趣味な人というのは、現役時代は趣味なんて没頭できる時間もなく仕事に打ち込んできたという人、特に男性に多い傾向があります。
サラリーマンでも仕事も趣味も両立してきた人は、退職後も第二の人生とばかりに趣味に没頭するのですが、仕事人間だけの人は家事もできない、友達もいない、家族とも話さない、テレビを一日中ごろごろしながら観るという人生を送ってしまうケースもあります。
このような人には、「日記」がおすすめです。
手書きの日記でもよいですし、パソコンやスマートフォンを使ってブログを毎日アップする方法などを知れば、ネット上ですが社会とのつながりも出来ます。毎日発信するとなると話題も必要になるので社会に関心が向くチャンスです。
ペットを飼うことも効果的
ペットを飼うということは予想以上に労力が要りますし、感情が豊かになります。ペットを飼うと情も湧きます。かわいいという感情、嬉しい、好きというプラスの感情が増えます。
また、犬などを飼うと必然的に散歩の必要があります。責任感のある人ほどマメに朝晩と散歩に連れていきます。犬のえさも用意しなければなりませんし、元気かどうかの確認も必要です。
人間からだけでなく、誰かに必要とされているということが大切なのです。
ペット療法ということが取り入れられている老人ホームもたくさんあります。
子供と触れ合うことも効果的
ペット療法と似ていますが、子供の世話をしたり、子供と遊んだりすることが認知症予防に効果があるとされています。
昔は大家族が当たり前でしたので、赤ちゃんの世話なども家にいるおじいちゃん、おばあちゃんの当たり前の仕事でした。しかし、核家族化がすすみ小さな子供と触れ合う機会が少なくなりました。
このことは、高齢者の役割を社会が取ってしまったといっても過言ではありません。
高齢者にとってみてもマイナスですが、子供にとってみてもお年寄りから何かを教わったり、かわいがってもらうということが減りました。
子供が高齢者と触れ合うことは教育的に語彙が増えたり、知恵が増えたりとプラスの面が多いとされています。可能であれば高齢者が子供と触れ合う機会が多い方がよいでしょう。
家族もおじいちゃん、おばあちゃんに孫やひ孫に会う機会を増やしましょう。